華やかにファッションが咲き誇った1990年代。あの頃のトレンドが、いまメンズファッションの世界で復活しています。今季は、90年代的なアイテムが多く出揃いました。当時の気分を象徴する「ビッグロゴ」、「ダッドスニーカー」、「センター分けヘア」の3つのキーワード。それぞれのトレンドと最新アイテムを紹介します。
90年代ムードを盛り上げる、ビッグロゴのアイテム。
1980年代から90年代にかけて、エリックB&ラキムやビッグ・ダディ・ケインなど多くのアメリカ東海岸のラッパーたちが成功やステータスを誇示するために、高級ブランドのロゴが大きく入った洋服を着用。そんな中、ストリートにビッグロゴブームが巻き起こります。このトレンドに大きく影響を及ぼした人物のひとりが、ニューヨークのテーラー、ダッパー・ダンでしょう。彼はハイブランドのアイテムを“サンプリング”し、リメイクアイテムを販売していました。このブートレグ的手法によって多くの高級ブランドのロゴを施した個性的なアイテムが登場し、ヒップホップカルチャーを通じてセレブリティや若者から支持されるようになったのです。
そして現在の90年代ファッションのリバイバル。グッチはダッパー・ダンとコラボし、当時のブートレグアイテムを引用してオフィシャルで展開。またロエベやバーバリーなどのヨーロッパメゾンからカルバン クラインなどのアメリカのブランドまでが敏腕グラフィックデザイナーと手を組み、かつてのロゴに手を加え、新ロゴを使ったアイテムを全面的に押し出す傾向が見られます。大きなロゴを用いたキャッチーな洋服が、自分が何者なのかを、最もわかりやすく伝えるメディアとなっているのかもしれません。
セルフパロディ的にビッグロゴをアレンジした、メゾンの遊び心。
今季買うなら90年代風のボリュームシューズ、ダッドスニーカーを。
90年代を代表するシューズといえばナイキやリーボックなどのハイテクスニーカーです。スポーツのパフォーマンスを上げるため各社がクッショニングの新システムを考案。ナイキはミッドソールにエアユニックを搭載した「エアマックス」を発売し、スニーカーを一気に進化させました。リーボックは、アッパー内部に空気を注入する「ザ・ポンプ」で業界をリード。各社が競争を繰り広げ、結果、スニーカーのルックスはフューチャリスティックに劇的に変化しました。
ストリートシーンではここ数年、90年代スケーターのカルチャーが優勢で、スニーカーもヴァンズのオールドスクールやアディダスのスーパースターのようなレトロタイプが人気を集めていました。が、エアマックス95が20周年を迎えて復刻ムードが高まるとハイテクモデルがリバイバル。さらにモード界では時代の寵児、デムナ・ヴァザリアが2017年秋、バレンシアガのメンズコレクションでハイテクスニーカーを発表。巷ではこれらの90年代風ボリュームシューズが「ダッドスニーカー(お父さんが履いていたような靴)」の名称で拡散。一挙、トレンド最先端に躍り出ました。今シーズンは、さまざまなメゾンからこのタイプのスニーカーが登場しています。
各メゾンからも、百花繚乱のダッドスニーカーが続々!
90年代を象徴するセンター分けヘアは、気軽にトレンドを取り入れられる究極の「こなし」。
70年代がヒッピー的ロングヘア、80年代はパンキッシュなショートヘアときたら90年代を象徴するのはスノッブなセンター分けヘアでしょう。当時の人気俳優を見れば、その人気ぶりは一目瞭然です。ハリウッドではブラッド・ピットを筆頭にキアヌ・リーブス、ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオら、日本では吉田栄作をはじめ江口洋介や木村拓哉ら、ファッションリーダーとしても一目置かれた有名人が取り入れると、多くの若者が彼らのスタイルを真似しました。
当時のトレンドが復活するいま、同じ空気感の髪型が流行するのは自然の理です。旬の服装に難なくハマるし、逆にヘアスタイルだけで90年代ムードを醸しだせます。ある意味、究極の「こなし」かもしれません。
92年のブラッド・ピットのヘアをアレンジしたウェイビーなセンター分け。94年に大ヒットしたドラマ『若者のすべて』のキムタクもこのタイプ。前髪を上げるのでマスキュリンな印象。プルオーバー¥41,040(税込)/コモリ(ワグ インクTEL:03-5791-1501) Tシャツ¥10,044(税込)/コム デ ギャルソン・シャツ(コム デ ギャルソンTEL:03-3486-7611) サングラス¥18,360(税込)/ステューシー アイギア(ステューシー ジャパンTEL:0548-22-7366) 眼鏡につけたサングラスホルダー¥540(税込)(東急ハンズ渋谷店TEL:03-5489-5111)
91年の主演ドラマ『もう誰も愛さない』が大反響を呼び、脚光を浴びた吉田栄作。サラサラヘアのセンター分けがトレードマークだった。このスタイルは額が隠れるのでジェンダレスな雰囲気を纏いたい人にお薦め。セーター¥205,200(税込)/ロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ 銀座並木通り本店TEL:03-3572-0303) ゴローズの90'sオールドネックレス/私物
以上の記事は、Pen9/15号「FASHION ISSUE A/W 2018-19 1990's」特集からの抜粋です。
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