日本屈指のグローバルブランドとなった、アシックス原点の理念を限定モデルに込める。

  • 写真:上野元行
  • 文:佐野慎悟 

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「健全なる身体に健全なる精神があれかし」という創業者の経営理念を語る アシックス マーケティング統括部・執行役員統括部長、ポール・マイルズ氏。

アシックスは、2007年に逝去した創業者、鬼塚喜八郎の生誕100周年を記念して、鬼塚の誕生日である5月29日に限定のシューズとアパレルを発売します。シューズの限定数は、鬼塚の生まれ年にちなんで3ブランド合計1918足。「アシックス」「アシックスタイガー」「オニツカタイガー」の3ブランドから、鬼塚が生前に描いたヒマワリの絵をモチーフに、原色使いが目に鮮やかなスペシャルコレクションを発表しました。アシックスのマーケティング統括部・執行役員統括部長、ポール・マイルズ氏に、鬼塚喜八郎が大切にしたものづくりのフィロソフィーと、同社にとって大きなマイルストーンとなる、今回の取り組みについて話を訊きました。

鬼塚喜八郎が、株式会社アシックスの前身となる鬼塚株式会社を設立したのは、戦後間もない1949年のこと。戦火によって荒廃した神戸の街で、生活苦から非行に走る青少年の姿を目にした鬼塚は、「若者の健やかな心身の成長を支えたい」という一心から、スポーツシューズの製造を開始しました。その時鬼塚の胸にあったのは、兵庫県の教育委員会で働く知人の口から聞いた、ひとつの格言です。

「“健全なる身体に健全なる精神があれかし”。この格言は、鬼塚商会創業時に鬼塚が掲げた創業理念であり、今日でもアシックスの礎となっているフィロソフィーです」とマイルズ氏は語ります。アシックスの社名は、ラテン語で『ANIMA SANA IN CORPORE SANO』と書かれるこの格言の頭文字を取って命名されています。

「創業当時と現在の状況は全く異なりますが、マインドウェルネスを保つためには、身体を動かすことが必要であるという事実はいまも昔も変わりません。若者が心身ともに健やかに育っていけば、やがては彼らがより良い社会を築く力となってくれるはず。そんなある種の社会貢献的なスピリットが会社の行動規範となっている例は、業界の内外を見ても非常に珍しいと思います」

鬼塚喜八郎氏。

鬼塚のものづくりは、常にアスリートとともにありました。初めて製品化した“鬼塚式バスケットシューズ”の開発は、高校のバスケットボール部が練習する体育館に通い詰め、選手の足の動きを研究し、選手たちから直接希望を聞くことから始まりました。マラソンシューズの開発に際しては、マラソン大会のゴール地点で選手たちを待ち構え、ゴール直後の足の状態を調べたという逸話も残っています。

「このアスリートファーストの精神も、アシックスが鬼塚から受け継いでいるDNAです。アスリートと常に接して、彼らがよりよい結果を残すためにはなにが必要なのかを考えることが、結果的にテクノロジーのイノベーションへと繋がります。我々が全力でサポートすることで新しい記録や最高のパフォーマンスが生まれれば、それを見た子どもたちに夢や希望を与えることもできるのです。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、イノベーティブなプロダクトを通してアスリートをサポートし、スポーツの素晴らしさを世界中の人々に発信できるチャンスだと考えています」

鬼塚は海外のアスリートたちにも積極的にアプローチし、世界に通用するシューズづくりを目指しました。そして鬼塚が開発したシューズを着用した選手たちが、国際的な大会において次から次へと結果を残していったことによって、すぐに「オニツカタイガー」の名前は世界中に知れ渡ることになります。そのようにして海外進出は順調に拡大し、その結果アシックスは、現在では海外での売り上げ比率が75%を誇る、日本屈指のグローバルブランドとして成長を遂げています。

鬼塚が残した“未完のヒマワリ”の絵をイメージしてデザインした限定モデル

ソールの周囲に沿うように配したGELの衝撃緩衝性と、ニットアッパーによる高いフィット感が特徴的な、アシックスのイノベーションが詰まった一足。ヒマワリのモチーフはグラフィカルに加工され、モダンな表情が表現されています。アシックス 「GEL-QUANTUM 360 KO100」 ¥20,000(税別)

今回発表された限定シューズは、「アシックス」「アシックスタイガー」「オニツカタイガー」それぞれの代表的なモデルをベースに、鬼塚が残した“未完のヒマワリ”の絵をイメージしてデザインされました。商品のボックスにはこのヒマワリの絵とともに、上記3ブランドのロゴが並んでプリントされています。このように創業者個人に焦点を当てた商品が発表されたことも、それぞれ役割の違う3ブランドが肩を並べて商品を開発することも、創業以来長い歴史の中でも初めてのことです。それだけ今回の鬼塚喜八郎生誕100周年という節目は、アシックスにとって特別な意味をもつことなのです。

「ヒマワリは鬼塚が80歳の時に描き始めたモチーフで、鬼塚の精神性を象徴するモチーフです。まっすぐ太陽に向かって、大きく力強く育っていくヒマワリの姿には、青少年の成長に対する鬼塚の希望が込められていました。これまで鬼塚の名前やアシックスのフィロソフィーを全面に打ち出したプロモーションを行ってこなかった理由は、我々のものづくりが常にアスリートファースト、プロダクトファーストだからです。まず、お客様に喜んでもらえる商品をつくることを第一に考えています。しかし今年は鬼塚生誕100周年という大きなマイルストーンの年。自分たちの存在意義を改めて確認する意味でも、世界中のお客さまに我々のスピリットを広く理解してもらう意味でも、またとない機会であると考えました」

今回発表された限定コレクションは、「アシックス」、「アシックスタイガー」、「オニツカタイガー」の一部店舗を除く直営店とオンラインストアで販売され、商品1点の売り上げにつき10ドル相当の金額が、国際NPO「ライトトゥプレイ(Right To Play)」に寄付されます。10ドルは、レバノンで暮らす難民の子どもひとりが当団体の提供するスポーツプログラムに10週間参加するために充てられます。

90年代に発売したランニングシューズをデザインベースに、ヒマワリのカラーリングを取り入れモダンにアップデート。ミッドソールにはアシックスが独自に開発したスポンジ材“fuzeGEL(フューズゲル)”を搭載し、高いクッション性を実現しています。アシックスタイガー「GEL-MAI KO100」 ¥16,000(税別)

ジョギングシューズとして1975年にアメリカで発売された、“タイガー コルセア”がデザインベースのスニーカー。鬼塚が描いたヒマワリをそのままモチーフとしてプリントし、レトロなフォルムと呼応させました。オニツカタイガー「 TIGER CORSAIR KO100 」¥13,000(税別)

アシックスでは1977年にスポーツ工学研究所を設立し、イノベーティブな先端テクノロジーの開発に力を注いできました。同時に日本の職人技術を活かしたハイクオリティな商品を世界に向けてより多く発信していくために、昨年鳥取県にある自社工場を大幅に拡大しました。

「今、メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手のシューズも、この工場で職人たちが作っています。一度、大谷選手やイチロー選手のようなトップアスリートが使うシューズを作るのと、中高校生向けのシューズを作るのと、どちらが難しいのか職人に尋ねたことがあります。彼は『どちらも難しい』と即答しました。アスリートのために作るシューズには、それぞれのプレースタイルや足形、好みのフィット感などの細かいこだわりがあります。一方で一般向けに作るシューズは、一足で不特定多数のニーズに最大限応えられるものでなければなりません。ただ作っている時の気持ちと熱量は、どのシューズを作る時も同じ。そこには『最高の一足を作りたい』という思いがあるだけです」

鬼塚喜八郎の意思を継ぎ、人々にスポーツを通して健全な心身を育んでもらう第一歩として、まずは身体を動かしてみようと思えるきっかけを提供することも重要です。アシックスは5月30日から6月4日までの6日間、伊勢丹新宿店本館7階=催物場にて、「KIHACHIRO ONITSUKA 生誕100周年 by ASICS ~鬼塚喜八郎が描いた未来~」と題したスペシャルイベントを開催します。ここでは限定商品の販売やアーカイブの展示に合わせて、ヨガ、ワークアウト、バイクフィットネスといった、各種アクティビティーの体験イベントも実施する予定です。スぺシャルイベント、フィットネスアクティビティの詳細はこちら(トップページで「ASICS」と検索) 

「アスリートはもちろん、スポーツを楽しむ人には、一人ひとりすべてにストーリーがあります。スポーツを通してストーリーが生まれ、そのストーリーはやがて人生の一部になって、自分を成長させてくれます。喜びがあり、悔しさがあり、努力があって、それが報われる感動がある。このような人生のストーリーに関わる仕事に携われていることは、とても幸せで、同時に責任感もあってとてもやりがいがあります。過去も、現在も、未来も、このようなスポーツと人との関係性は変わりません。だからアシックスのコアとなる鬼塚のスピリッツも、永遠に変わることはありません」

鬼塚喜八郎が、後世に残した“未完のヒマワリ”。この“未完”という状態は、「青少年の心身の育成」というアシックスの掲げるミッションが、いつか終わりを迎えるものではなく、これからも世界の若者たちに、夢と希望を与え続けていく姿を象徴しているようです。

問い合わせ先/アシックスジャパンお客様相談室
TEL:0120-068-806

「アシックス 鬼塚喜八郎生誕100周年スペシャルページ」
アシックス
https://www.asics.com/jp/ja-jp/ko100
アシックスタイガー
https://www.asicstiger.com/jp/ja-jp /ko100
オニツカタイガー
https://www.onitsukatiger.com/jp/ja-jp /ko100

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