復活したオーストリアの名門「カール・スッキー&ゾーネ」は、秒表示がワルツを踊る⁉

  • 文:笠木恵司

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カール・スッキー&ゾーネ「ワルツNo.1 ブルー・ダニューブ」。ダイヤルの左右に緻密なギョーシェパターン。6時位置のスモールセコンドにも同様の彫り模様があり、1分間に1回、ダイヤルとのラインが一致します。自動巻き、ステンレススチール、ケース径41.5㎜、厚さ9.3㎜、パワーリザーブ約48時間。¥1,296,000(税込)

時計といえばスイス、近年はドイツも人気ですが、19世紀のウィーンにも宮廷で愛された唯一の高級ブランドがありました。「カール・スッキー&ゾーネ」。オーストリア・ハンガリー帝国の解体によって1918年から休眠状態でしたが、2016年に同地で復活。創業年の1822年にちなんで限定22本で製作されたファーストモデル「ワルツNo.1」のセカンドシリーズが、今年から日本に初上陸しました。

薄型のスレンダーなケースに、バーインデックスと細身の2針で構成されたミニマルなデザインですが、ダイヤルの緻密な装飾模様と6時位置のディスクに際立った特徴があります。ダイヤルの右半分は横方向のストライプ、左側は縦方向と分かれており、6時位置のディスクも同じパターン。このディスクはスモールセコンドと同じく秒のモニターであり、1分で1回転します。このため、装飾模様も1分間に1回だけダイヤルと完全に一致する瞬間があるのです。これは19世紀のウィーンで流行した三拍子の優雅なワルツの円舞をイメージしており、「ワルツィング・ディスク」と名付けられています。急ぐことなく流れる時を楽しもうという、当時の文化や精神性を表現しているそうです。

ムーブメントは評価の高いスイスの専業メーカー、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエが製作。ゴールドプレートのマイクロローターによる極薄自動巻きキャリバーを搭載しています。

ブランド名にあるカール・スッキーは、オーストリア皇帝のフランツ・ヨーゼフ1世や、皇后のエリザベートに仕える宮廷時計師でした。その息子たち(ゾーネ)とともに製作してきた懐中時計は高い品質、精度、エレガンスで知られており、精神分析の父とされるジークムント・フロイトもベスト着用時はポケットに入れていたそうです。

爛熟期のウィーンで人気を博したブランドだけに、歴史的な背景は奥行きがあり、今後もさまざまなエピソードが明かされていくかもしれません。

ケースバックはサファイアクリスタル製。ブランド名が刻印されたゴールドプレートのマイクロローターを備えた、薄型ムーブメントを見ることができます。

カール・スッキー&ゾーネ「ワルツ No.1シルバー・ダイヤル」。ダイヤルカラーは3種類あり、シルバーとブラックが合わせて45本、ブルーが5本、合計50本の世界限定。自動巻き、ステンレス・スチール、ケース径41.5㎜、厚さ9.3㎜、パワーリザーブ約48時間。¥1,296,000(税込)

「ワルツ No.1」は「装飾は罪悪である」と主張したウィーンの建築家、アドルフ・ロースを称えるデザインが特徴。ダイヤルだけでなく、ケースサイドもラインがすっきりとしてミニマルなデザインポリシーが貫かれています。

問い合わせ先/ノーブルスタイリング TEL:03-6777-1600