ものづくりの未来を担う“クラフト”作家とは? 『ロエベ クラフトプライズ』作品展を見逃すな。

  • 文:小川 彩
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大賞を受賞したのは、ドイツの作家、エルンスト・ガンペールによる『Tree of Life 2』。嵐で倒れた樹齢300年のオークに、緻密なフィリグリー(銀線細工)を施した技術と、自然素材を用いたオーガニックなテクスチャーが評価されました。

ロエベ財団が、世界中のクラフト作家やアーティストの作品を公募し、注目を集めていた「ロエベ クラフトプライズ」。2017年春に発表した大賞受賞者を含む最終ファイナリスト26名の作品展『インターナショナル クラフト プライズ』が、マドリードからニューヨークを経て東京へ巡回し、六本木の21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3で2017年11月30日(木)まで開催されています。

「工芸技法の斬新な適用と芸術性あふれるオリジナルコンセプトを組み合わせること」を唯一の応募資格としているこのプライズ。ものづくりにおける“クラフト”の重要性に光を当て、 現代にふさわしいスタイルで顕彰することを目的に設立されました。発案は、ロエベのクリエイティブ・ディレクターを務めるジョナサン・アンダーソン。1946年にドイツからスペインへと移住した職人が立ち上げた協働工房を前身とする、ロエベの創業ストーリーにインスパイアされたそうです。

「私たちは、ロエベ創立70周年に当たる2016年を機に、このプロジェクトをスタートさせました。100周年に向けてあと30年、毎年開催する予定です。大切なのは、ひとりの優れた人物を選ぶことではなく、多様な技術や才能に光を当てること。第1回は、世界中から約4000点の作品が集まりましたが、こんなにも多くの高度な技術があろうとは、予想もしていませんでした」。

うれしそうに語るのは、ロエベ財団のディレクター、シーラ・ロエベ。実際に、ファイナリストは年齢も国境もさまざまです。18歳の若手もいれば、普段は農業を営んでいるという作家、さらには人間国宝クラスの評価を得ているアルティザンも……。コンセプチュアルなアプローチから、技術と時間が集積した作品までが並ぶ会場で、「手で考えたり、手で感じるような工芸的なものづくりが、現代ではとても大切だと思う」シーラは語ります。

クラフトを軸としたものづくりの未来を見据えた、ロエベの意欲的なこの取組み。ブランドの熱量がこもった、記念すべき第1回の受賞作を間近で見られる貴重な機会です。お見逃しなく!

展示作品から。ファイナリスト26名のうちのひとり、アルゼンチンのChiachio & Giannoneによるテキスタイル作品『Selva Blanca』。

展示作品から。特別賞を受賞した日本人のガラス工芸作家、神代良明の『Structural Blue』。

左から、第1回審査員を務めたジョナサン・アンダーソン、デザイナーの深澤直人、ロエベ財団ディレクターのシーラ・ロエベ。「クラフトにおいて日本はお手本です。伝統工芸の宝庫ですし、後継者や職人が少なくなっては困ります!」とシーラ。

ロエベ『インターナショナル クラフト プライズ』

開催期間:2017年11月17日(金)〜11月30日(木)
開催場所:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3
東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウンガーデン内
TEL: 03-3475-2121
開催時間:10時〜19時 ※入場は閉館の30分前まで
会期中無休
会期中入場料無料
www.2121designsight.jp