アアルトの家具もアラビアの食器も!『フィンランド・デザイン展』で知る北欧スタイルの系譜。

  • 文:内山さつき

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フィンランドの美しい自然と動物をモチーフに描くことで知られるグラフィック・デザイナー、エリック・ブルーンが手がけた自然保護協会のポスター原画 「サイマーワモンアザラシ」1974年 作家蔵 © Erik Bruun 

今年、独立100周年を迎えるフィンランド。誰もが一度は目にしたことがある、けしの花をモチーフとしたマリメッコのウニッコのテキスタイルや、つららを思わせるイッタラの美しいグラスシリーズ「ウルティマツーレ」、ムーミンの愛らしい柄が描かれたシンプルで機能的なフォルムのアラビアのマグ……。フィンランドのデザインは、なぜこれほどまでに人を惹き付けるのでしょうか? そんな素朴な疑問に、実物を鮮やかに見せながら答えてくれる展覧会『フィンランド・デザイン展』が府中市美術館で開催中です。

1917年にロシアから独立したフィンランドは、長らくスウェーデンやロシアに支配されてきた歴史があります。そのため、19世紀末にヨーロッパ各地で民族意識が高まった際、郷土に根ざした力強い感性が、アイデンティティとして芸術活動に積極的に取り入れられました。また、北欧諸国の中でも特に貧しかったことや、長く厳しい冬を家の中で過ごさなくてはならないことも、日常生活で長く使える機能的なデザインが生まれる背景になりました。素朴で明るく、シンプルでありながら大胆なデザインの数々には、フィンランド人が愛してやまない森と湖が織りなす、美しい四季も反映されています。

本展では、フィンランド・デザインの歴史を、19世紀末の民族意識の高まりである「ナショナル・ロマンティシズム」の台頭から、黄金期と言われる1950年代〜60年代、現代までの6つの時代に分け、それぞれの時代を象徴するデザイナーやアーティスト、また彼らの活躍の場となった企業を取り上げ、代表作とともに紹介しています。

展示されているのは、アルヴァ・アアルトの椅子やカイ・フランクのテーブルウェアなど、いまも暮らしの中で愛され続けているデザインや製品ばかり。美しさに加えて、使い手にとって快適であることや現代的な思考を大切にするそのデザインは、フィンランドという国のあり方そのままを体現しているようです。会場を彩る心地よいデザインを、堪能してみてください。

左:アルテックの椅子「41 アームチェア パイミオ」アルヴァ・アアルト 1931~32年 © Artek 右:図面「41 アームチェア パイミオ、42 アームチェア」アルヴァ・アアルト アルヴァ・アアルト美術館蔵 © Alvar Aalto Foundation, Alvar Aalto Museum collections 「北欧モダンデザインの父」と言われるデザイナー、建築家のアルヴァ・アアルトは曲げ木の技術を使い、自然の素材を活かしたぬくもりのある家具デザインを残しました。

イッタラのテーブルウェア「ティーマ」シリーズ カイ・フランク 1952年 © FISKARS シンプルで実用性、機能性に優れた美しさを追求したカイ・フランクのテーブルウェア「ティーマ」シリーズは、世界中のテーブルウェアのデザインに影響を与え続けています。

陶芸家のトーベ・スロッテが手がけるアラビアのムーミンシリーズのマグカップ「夏至」とその原画。トーベ・ヤンソンの原作を尊重し、作品の理解に基づいた魅力的なデザインです。2014~16年  © FISKARS  © Moomin Characters TM Photo: Chikako Harada 

フィンランドを代表するテキスタイル・デザイナー、マイヤ・イソラによる、マリメッコの代名詞とも言える人気のファブリック・パターン「ウニッコ(ケシの花)」 1964年 © Marimekko 

『フィンランド独立100周年記念 フィンランド・デザイン展』

開催期間:2017年9月9日(土)~10月22日(日)
開催場所:府中市美術館
東京都府中市浅間町1-3
TEL:03-5777-8600
開館時間: 10時~17時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(10月9日を除く)、10月10日
入場料:一般¥900
http://finnish-design2017.exhn.jp/index.html