このところ、日本人が世界で活躍する場面が目立っています。そんなニュースを目にするたびに考えてしまうのが、日本は世界にどう見られているのだろうか、という疑問。そして自分自身が日本をどう見ているのか、も。
三菱第3代社長の岩崎久彌が収集した、約4万点の書物コレクション「岩崎文庫」を中核に創立されたのが「東洋文庫」です。この夏、美しい絵画資料や地図などの宝庫としても有名な東洋文庫ミュージアムが、『本のなかの江戸美術』と題し、江戸期の絵巻・絵本・春画を含む浮世絵版画にスポットをあてた展覧会を開催。誰もが知っている有名な絵画作品や、秘蔵の初公開品などから、江戸時代のさまざまな表情を探っていきます。
いまやCMでも人気の浦島太郎を描いた17世紀の「浦島太郎物語」や、武蔵坊弁慶の幼少時代を描いた江戸期の「弁慶物語」(初公開)などは興味深く見られるでしょうし、大名が特注したという幕末の豪華な春本「正写相生源氏」も、いろんな想像が膨らんでしまいます(この殿さま、動乱の時代に何をやってたんでしょう!)。誰でも一度は目にしたことがある歌川広重の浮世絵「名所江戸百景」は、会期中、毎日ページ替えをして展示。東京人なら、風景が大きく変わる東京オリンピック前に絶対見ておきたい名画です。
会場では「日本・イタリア国交150周年記念展示」も同時開催。マルコ・ポーロの「東方見聞録」(1496)や、伊達政宗がローマに使節を派遣した記録「伊達政宗遣使録」(1617)も展示、紹介されます。歴史的に、世界が日本をどう見てきたのかも興味が沸きますよね。
この夏も、きっと世界中で日本人は活躍するはず。夏休みの自由研究ではありませんが、頭の中を好奇心モードに切り替え、世界に誇る日本文化のルーツを見直してみるのはいかがでしょうか。こうした絵画を眺めるだけで、当時の人々の生活や考え方まで感じられるのは、見ている自分も同じ日本人だから。自分がこれまで学校で教わってきた日本のイメージと、江戸時代の人が感じていた日本を、実際に比べてみると、新しい視野が開けてくるかもしれません。(幕田けいた)
『本のなかの江戸美術』
開催期間:8月17日(水)~12月25日(日)
開催場所:東洋文庫ミュージアム
東京都文京区本駒込2-28-21
開催時間:10時~19時(入館は18時30分まで)
休館日:火(ただし、火曜日が祝日の場合は開館し、翌平日が休館)
その他、臨時に開館・休館することがあります。
入場料:¥900
関連イベント:
製本体験シリーズ第3弾! 巻物をつくろう!
8月20日(土) ①10時30分~12時、 ②14時~15時30分
【参加費】¥1,600、小学生以下¥1,300(入館料込み)
ドナルド・キーンさんと親しむ古浄瑠璃の世界
10月23日(日)14時~ 16時
講演:ドナルド・キーン
浄瑠璃弾語り:越後角太夫
【参加費】無料(別途入館料がかかります)
落語で入門!江戸の暮らしと言葉
11月3日(木・祝)14時~ 16時
三遊亭好吉(落語家)
【参加費】無料(別途入館料がかかります)
国際シンポジウム 絵入本と日本文化(仮)
12月10日(土)、11日(日)10時~ 17時
【参加費】無料(別途入館料がかかります)
展示コラボ アカデミア 江戸の心を映す明治・大正のきもの
11月26日、12月3日(土)
講師:伊豆原月絵(日本大学教授)
【受講料】¥8,700(別途実費)
※上記のイベントはすべて事前の申込みが必要。