海外でも高い評価を得ている、スタジオ・ジブリのアニメ作品の魅力の理由には、リアリティあふれる動きや、創造性豊かなデザインが挙げられます。しかし、その人気の根源は、やはり総合的な演出に尽きると思います。綿密に計算されたキャラクターの芝居と、それに伴うカメラワーク、撮影処理――。これらは海外製の大予算のアニメーション作品とは一線を画した、日本独自の映像文化の中で育まれたものです。
そうしたアニメーション作品の設計図に当たるもの「レイアウト」と呼びます。これはストーリーの流れをコマで割った「絵コンテ」の演出意図を汲み、その構図を作画のフレームサイズに拡大して描く工程。スタジオジブリが作品制作の際に作る「レイアウト」では、同時にキャラクターの立ち位置や動きの指示、カメラワーク、撮影処理、細かい舞台設定など、カットで表現されるすべてが決定されます。この「レイアウト」をもとに、アニメーターがキャラクターの芝居を、美術スタッフが背景画を描くわけですから、本当に作品づくりの要の作業といえるでしょう。
企画展「スタジオジブリ・レイアウト展」では、スタジオジブリ・三鷹の森ジブリ美術館全面協力のもと、『風の谷のナウシカ』から『思い出のマーニー』まで、宮崎監督直筆のレイアウトを中心に、およそ1300点の画稿を公開。これほど大規模な展覧会は初の試みですが、展示予定の中には、高畑監督と宮崎監督が手掛けた『アルプスの少女ハイジ』や『赤毛のアン』『未来少年コナン』、宮崎監督の映画第一作『ルパン三世 カリオストロの城』といった、ジブリ以前の歴史的名作のレイアウトも含まれているのが、うれしいところ。近年のファンだけでなく、かつて宮崎・高畑アニメを見ていた世代も堪能できるよう、幅広い展示内容になっているのにも注目です。
世界中のファンを魅了する、ジブリのとっておきの秘密である「レイアウト」に触れてみると、作品の見え方が変わってくるかもしれませんね。(幕田けいた)
スタジオジブリ・レイアウト展
開催期間:7月16日(土)~10月10日(月・祝)
開催場所:新潟県立万代島美術館
〒950-0078 新潟市中央区万代島5-1(朱鷺メッセ内 万代島ビル5 階)
会期:7月16日(土)~10月10日(月・祝)
※休館日7月25日(月)、8月29日(月)、9月26日(月)
開館時間:10時~18時(観覧券の販売は17時30分まで)
料金:前売券(一般)¥1,000、当日券一般¥1,200、大学・高校生¥1,000、中学生以下無料
会期中イベント
ギャラリートーク
開催時間 : 7月16日(土) 11時
出 演 : 田中千義氏(スタジオジブリ)TeNY アナウンサー
展示室にて/要観覧券
日 時 : 9月24日(土) 14時
出 演 :小池利春氏( 新潟市マンガ・アニメ情報館副館長)TeNY アナウンサー
展示室にて/要観覧券
ミュージアム・コンサート
日 時 : 9月10日(土) 11時30分 ~12時
出 演 : 新潟市ジュニア合唱団
美術館ロビーにて/無料