ミュージアムと聞くと、どこかアカデミックで、学習的な要素をイメージして、斜に構えてしまいませんか? もっと感覚的で気軽に「知」を楽しむことはできないものでしょうか。
アートとエンターティメント、古典と前衛など、さまざまなジャンルでボーダーレス化されたコンテンツが、当たり前のように人気を博しています。そんな中で、美術館と博物館という境界を越えた「知」のボーダーレスの形が公開されます。
横須賀美術館の「自然と美術の標本展『モノ』を『みる』からはじまる冒険」は、美術と科学で共通する重要なテーマ「自然」をモチーフにした、現代美術作家の作品と博物館の収蔵資料を併せて展示。ミュージアムでしか得られない「モノ」を「みる」体験の意味を再考する展覧会です。
現実には存在しない、架空の生き物「幻獣」――羽の生えた魚やムカデのように脚をたくさん持つトカゲの標本を、独自の方法で制作・発表する江本創。鉱物標本の新しい形を提示し、鉱物世界の魅力と可能性を追求するフジイキョウコ。花や食虫植物を思わせる立体の支持体の表面に着彩する絵画作品を制作する原田要。昆虫を超高解像度で撮影して人間大に出力した《超高解像度人間大昆虫写真[life-size]》を展開する橋本典久をはじめとする作家たちの作品が、横須賀市自然・人文博物館が所蔵する岩石や昆虫、植物などの標本、そして伝統的な画材製法を後世に継承する画材ラボ PIGMENTが所蔵する希少性の高い画材等ともに紹介されます。
そもそも「知」とは、単純な驚きが出発点です。世界中の情報が携帯端末を通して瞬時に得られるのが当たり前の現代。ミュージアムを訪れて本物の「標本」を見ることは、子どもの頃に経験した、「知」の発見の驚きの再体験にほかなりません。本展覧会の、美しくて奇妙で不思議な「自然」の標本を見れば、大人だって思わず「おっ!」と声をあげてしまうこと請け合い。その感覚こそ「知」の楽しみなのです。そして同時に、この標本展は、情報化社会自体をも見直す絶好の機会なのかもしれません。(幕田けいた)
自然と美術の標本展「モノ」を「みる」からはじまる冒険
開催期間:7月2日(土)~8月21日(日)
開催場所:横須賀美術館
神奈川県横須賀市鴨居4-1
開館時間:10時~18時
休:7月4日(月)、8月1日(月)
料金:¥800
※トークショー(江本創、鉱物アソビ)、ワークショップ(原田要)、親子向けトーク、学芸員によるギャラリートーク等あり。
※学芸員によるギャラリートーク:日時:7月23日(土)14時~ 直接会場にお越しください。参加には観覧券が必要です。
http://www.yokosuka-moa.jp/