全世界に熱狂的ファンをもつ「スター・ウォーズ」の最新エピソードが公開間近のいま、渋谷・ディーゼルアートギャラリーにてフランス人フォト グラファー、セドリック・デルソーの日本初となる写真展「DARK LENS」が開催されています。
霧の中を徘徊するAT-AT、都市を疾走するスピーダーバイク、ドバイのビルの建設現場に着陸するミレニアム・ファルコンなど、「スター・ウォーズ」のキャラクターがごく自然に、まるでそこにいるかのような感覚に陥るのが「DARK LENS」シリーズです。スター・ウォーズのオマージュにとどまらない様々なメッセージが写真からは伝わってきます。
「この制作活動がスタートしたのは2004年から。良いフィギュアを探すのに1年かかってるので、正確には2003年からでしょうか。フォトグラファーというのは、子ども時代の『光』を求めて撮影したり、またそれを作品に表現したいという側面をもっていると思います。僕の中でスター・ウォーズはまさにその光。最初にスター・ウォーズに出会ったのは9歳の時で、確か『エピソード6』でした。子ども心にすごいインパクトを受けて、そこからSFといえばスター・ウォーズになりました」
そう語るセドリック自身は、特にスターウォーズが好きだからこの風景にはめてみよう、と考えついたわけではなく、ごく自然に風景とキャラクターが頭の中で融合するそう。極端に言えば、その風景を撮影したときにはもう、頭の中ではキャラクターがそこに見えているということです。
したがって彼の選ぶ風景は、彼にとって“non-lieux”。パリの無機的なオフィス街、ドバイの工事現場など、廃墟あるいは開発途中の地であり、人間味も生活感もない空虚な場所です。そこにキャラクターをはめ込むと、なぜかすんなりとなじみ、まるで私たちが住んでいる隣町のスナップショットのように、慣れ親しんだ日常の一部になり得ています。
キャラクターが最初からそこにいたかのような、不思議だけれど違和感のない写真。セドリックがタイムマシンで未来に行き、スナップショットを撮影してきたかのような錯覚に陥るのです。「風景とキャラクターがお互いに邪魔しない。そういった場所を撮影することが大切なんです」と、セドリック。
さて、彼の作品には一つ興味深い点があります。それは、タイトルの通り、登場するのがほとんど悪役だということ。つまりダークサイドに落ちた者たちで、これがこの展覧会の大きなテーマになっています。
「正義の味方や優しい人というのは実はとてもシンプルで分かりやすい存在。ダークサイドの人の方が実は複雑でとても奥深いんです。僕が興味があるのはそういった人の側面です」
明るい人であっても必ずダークな側面を持っているし、ダークな場所を通らないと明るい場所、ハッピーには行き着けない。そんなメッセージも作品からは読み取ることができます。また、こういった作品は版権の問題など多くのハードルがあり、ジョージ・ルーカス氏のサポートなくして実現しなかったとのこと。
「スター・ウォーズのファンの集まりが2010年にオーランドであったときに、僕の作品がそこに飾られており、それをルーカス氏が絶賛してくれました。そこから、ルーカス氏が様々な形で応援してくれて、実現したのです」
今回、「ずっと来たかった」という日本に初来日したセドリックさん。スナップ用のカメラを持って、日本の様々な風景を撮影したそうです。日本の空にスター・ウォーズのキャラクターが飛ぶ日が、いつかくるかもしれません。(大嶋慧子)
『DARK LENS』Cédric DELSAUX
開催期間:2015年11月20日(金) ~ 2016年2月11日(木)
会場:DIESEL ART GALLERY
東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F
開館時間:11時30分~21時
不定休
入場料:無料
www.diesel.co.jp/art
TEL:03-6427-5955
キュレーター:BERGONZO Philippe(ベルゴンゾ・フィリップ)
アシスタント キュレーター:北岡佐和子