雨が降っている、という状況をどう撮るのか? 渡辺兼人の写真展か気付かせてくれたもの。

    Share:

    写真家、渡辺兼人氏の写真展「雨はどのように降るのか」が、11月14日(土)まで、東京のギャラリーメスタージャで開催されました。本展では、渡辺の「雨」を主題とした作品にフォーカスしたもので、2006年に発行された「雨」、2008年の「雨の営み」からセレクトされたものと、1980年代から90年代にかけて海外で撮影された未発表写真を含む“雨の作品"で構成され、さらに東京綜合写真専門学校出版局から新たに刊行された写真集「既視の街」の販売も行われました。

    渡辺は、2000年半ばごろから、雨を主題とする作品を作成し始めました。雨が降ることで見られる雨粒や、窓を伝う水滴、水たまりは、写真に写すことができますが、「雨が降っている」という現象自体は、被写体として正確に写真で表現することはできません。しかし、一方で渡辺の写真は「雨を主題にしているにもかかわらず、雨が降っているということを映像化することにはあえて拘泥していない」(ギャラリーの解説より抜粋)といいます。写真に写らないとわかっている「雨が降っていること」を撮影し続けた渡辺が表現しようとしたもの、それがこの展示会の見どころでした。

    写真で切り取られた、目に見える雨の存在と、写真に写っている雨の間にある違い、共通点などを通して、私たちの日常の中にある普遍的でありながら特別な瞬間に気づくきっかけとなるかもしれません。

    晩秋の冷たい雨に不意に打たれて憂鬱になっていた気分が、少し変わるような、新しい“雨”との出会いに気付かせてくれた写真展でした。(高柳 圭)

    渡辺氏の作品集「雨」(2006年)、「雨の営み」(2008年)から抜粋した作品や、1980年代から90年代にかけて海外で撮影された、未発表作などの白黒写真が展示されました。

    写真集『既視の街』AG+Gallery、東京綜合写真専門学校出版局 共同出版¥18,900-(税込)は引き続きギャラリーメスタージャにて販売中。

    問い合わせ先:ギャラリーメスタージャ 
    TEL:03・6666・5500
    http://agplusgallery.com/pg131.html