映画監督・青山真治と芥川賞受賞作家の田中慎弥による、映画『共喰い』は観るべきか?

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    映画の舞台は、昭和最後の夏の山口県下関市。

    登場人物は以下の通り。
    SEXの際に女を殴る性癖のある父。水商売で生計を助けるその若き愛人。父と愛人と暮らす男子高校生。空襲で片手を失った離れて暮らす母。
    さまざまな生々しい昭和の日本の貧しい暮らしと人間模様が交錯する中で、さらに鈍い光を放つのが、父の忌まわしい「血」を受け継いだ息子の心の葛藤だ。愛情は、SEXは、ときに甘美でもあり、ときに忌まわしい。吐きたくなるほどの嫌悪感さえ感じることもある。それらすべてがこの映画には凝縮されている。

    昭和生まれの日本の男なら、この映画が放つ日本特有の“男の陰の臭い”がわかるだろう。
    それをこの、一見表面的にはクリーンとなった平成の時代の男たちはどう見るのだろうか? この映画は、観るべきか、観ないべきかを実に問われる作品かもしれない。なぜならば、本作に描かれている当時はあたりまえだった本能すべてが、現代では覆い隠されてしまっているからだ。(Pen編集部)

    『共喰い』
    監督:青山真治
    出演:菅田将暉、木下美咲、田中裕子ほか
    2013年 日本映画 1時間42分
    配給:ビターズ・エンド
    9月7日より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー