Penの特集「東欧&ロシアのレトロ・デザインを見直せ。」が、書籍となって10年ぶりに帰ってきました。
残念ながら、この間に姿を消してしまったものも少なくなく、今後もその流れが止まらないことは間違いありません。しかし、そんななかにあっても、ロドチェンコやマレーヴィッチのアヴァンギャルドなデザイン、メーリニコフの実験精神が宿る建築、またスターリン様式の奇妙な建築美は、いまなお存在感を見せつけます。
また、プラスチックでできたキッチュな生活雑貨や「西」のコピーでありながらも独自の進化を遂げたロシアカメラたち。そして、その色合いと構成で独特のインパクトを放つ、ポスターなども、私たちを魅了してやみません。
ただし、本当の魅力はそのレトロさにとどまりません。
ペーター・ペトロフやイングリッド・ヴラソフなど東欧出身のファッションデザイナーの目覚ましい活躍。また、「西」の支援を受けつつ、トラバントなど「東」の車がエコカーとして復活を遂げようとするなど、ロシア・東欧デザインがいま、その底力を見せようとしています。
東西を隔てていた壁が崩れて、二十余年。建築、エディトリアル&プロダクトデザインからファッションまで、かつて「壁」の向こうにあったレトロデザインを再発見しつつ、その新たな出発も見届けることのできる一冊です。(Pen編集部)