ニューノーマルのバッグ選びは、エスニック&サステナ目線で。美しいデザインが続々と登場中!

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    vol.108

    ニューノーマルのバッグ選びは、エスニック&サステナ目線で。美しいデザインが続々と登場中!

    構成、文:高橋一史 写真:青木和也 | 

    うねのある幾何学模様のテキスタイルが新鮮なトート。合わせる服装が写真のような黒ニットだと都会的になり、カジュアルだとエスニックに表情が変わる。 トート ¥55,000(税込)/シブリングス アーミー、黒ニット ¥25,300(税込)/グランサッソ(ともにエスディーアイ TEL:03-6721-1070)

    こんなときだからこそ、男性もバッグを持ち歩く行為そのものを愉しみたい。あたかも女性が新作バッグを手に入れて、ウキウキして街歩きしているように。子どもがバッグのハンドルに好きなぬいぐるみをぶら下げて、一緒に生活しているように。昨年から続くステイホームの日々で、仕事相手にアピールするためのお堅いビジネスバッグは必要なくなった。その一方で、テレワーク用に自宅周辺にパソコンを運んだり、日用品を買う回数は増えた。男性もニューノーマルな日常にフィットする、心を軽やかにする愛用品を探そう。洒落たバッグには地味な服装を華やかに格上げする力もあるのだから。

    「似た選択なら社会的意義のあるものを」が現代の買い物のセオリーで、それはバッグ選びにも当てはまる。製造国の人々の生活を支え、地球環境に優しいプロダクトこそ、新たに手にする意味がある。近年はこうしたテーマに基づきつつ、ファッション性が高いバッグが登場するようになった。ここではそんな中から2つのブランドをクローズアップ。


    南米ペルーの息吹漂う、シブリングス アーミー


    まず最初に紹介するのは、上写真のグラフィカルなトート。黒ナイロンのリュックを背負うと学生に見えがちな服のときでも、このトートなら大人の洒落たムードになる。本体のテキスタイルは、南米ペルーの山岳地方ケチュア族による手織りの工芸品「アグアヨ」。カーペットのごとく凹凸のある厚手コットン生地が、ベーシックなレザートートに豊かな表情を与えた。

    手がけたシブリングス アーミー(Siblings Army)は、ニューヨークのパーソンズ美術大学で修学したキナ&レレ・アンダーセン姉妹が、旅行中にアグアヨに出会いはじめたブランド。地域のコミュニティを大切にするため、バッグ製造もペルー国内で行っている。雇う職人にはペルー政府が定めた最低賃金以上の報酬に加え、健康保険や将来のライフプランも保証しているという。素材も生分解しない合成繊維は極力避け、再生やアップサイクルされたものを優先。レザーは環境への負荷が少ない染色方法のものだ。

    エスニックな色柄は、暑い日が何ヶ月も続く日本の夏によく似合う。カジュアルな服装のときに持つのもいいが、ドレッシーな服と組ませる大人の技ありコーデもお薦めだ。

    裏地は素朴な風合いの薄いコットンで、スナップ留めのポケットがつく。ブランドネームには、Sisterhood(姉妹)、Partnership、Loveなどの言葉が。

    ケチュア族の女性たちが屋外で手織りしている光景。鮮やかな民族衣裳を生み出すセンスから工芸品がつくられている。photo © Siblings Army

    バナナの布 !? 使いやすさも群を抜く、クエスチョン

    バナナ繊維から紡績されたバナナテックスのトート。上部が巾着式でストラップで絞れる。パーカなどスポーティな服と相性がいいデザインだ。※2021年8月発売。トート¥27,500(税込)/クエスチョン、パーカ ¥37,400(税込)/ケープハイツ(ともにグリニッジ ショールーム TEL:03-5774-1662)

    自転車にまたがり電車に乗り、肩に掛けたり背負ったり、素早く荷物を出し入れする。そんな現代の生活に役立ち、かつリーズナブルなバッグをラインアップするのがスイスのクエスチョン(QWSTION)。彼らがサステイナブルな観点から開発したテキスタイルが、バナナの茎から採取した繊維の「バナナテックス」だ。バナナといっても食用でなく同じバショウ科バショウ属の植物。日本の和紙にも使われるマニラ麻(麻の名がつくが麻ではない)と原料は同じ。成長が早く殺虫剤や化学肥料もいらないことから、バナナ繊維は持続可能な素材として注目度が高い。バナナテックスの原料は主にフィリピンから調達されている。

    このテキスタイルはスタイリッシュな点でも優れる。上写真のトートはストラップまでバナナテックスで、独特のぬめりが高品位だ。色は素材のままの無染色ナチュラル。トップハンドルの補強ステッチを丸い形にしたり、ハンドル上部に持ちやすいセカンドハンドルを取り付けたり、巧みな工夫はクエスチョンならでは。ハイセンスな彼らによる、非凡な仕上がりのバッグである。

    背面のストラップを引くだけでバックパックに早変わり! ハリのあるテキスタイルの特性を生かしたディテールだ。

    パンデミックが続き長く家にいると、身の回りのプロダクトの存在意義が気になってくる。高価な贅沢品が必ずしも心に響かないことも、いまやみなが感じている。今回紹介した2ブランドのようにストーリーのあるファッションアイテムと一緒に暮らせば、他国の人々や大自然との結びつきを感じる豊かな生活につながるかもしれない。