ステイホームを癒やす、 ランタン「リフル」の木の温もりと炎のゆらぎ。

  • 写真:青野 豊 photographs by Yutaka Aono

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ステイホームを癒やす、 ランタン「リフル」の木の温もりと炎のゆらぎ。

フードや木製ボディに職人の手仕事が息づく。4月生産分が完売し、次回生産は8月予定。¥39,600(税込)

1949年創業、名古屋市に本拠地を置く石油燃焼機器メーカーのトヨトミ。今年新たに、固形燃料ランタン「リフル」が発売された。アウトドア用の照明器具ではなく、本物の炎で心のスイッチを切り替えるというのがこの商品のコンセプト。同社は石油コンロを礎として、約70年にわたり「暖めるための炎」に携わってきた。リフルは、火に触れる機会が減っている現代において、炎の新しい価値をつくりたいと生み出された意欲的な一台だ。

手にしてみると、一般的なアロマキャンドルをふた回りくらい大きくしたような存在感がある。意外に思うかもしれない。だが、この大きさこそがキャンドルのような小さな炎ではなく、キャンプファイヤーのような燃え盛る炎でもない、“眺める”のにちょうどいい大きさの炎をつくり出すための最適解なのだ。

炎を囲むガラスフードと、それを支えるボディへのこだわりにも感服する。群馬にある上越クリスタル硝子の工房で、職人が型吹きしてから仕上げの加工をしたガラスフードと、山桜の原木を富山の尾山製材で削り出し、栃木の昭栄家具センターで加工した木製ボディ。手作業のため、ひとつとして同じものはなく、味わい深い仕上がりだ。

使うのは、メタノールを主成分としたリフル専用の固形燃料。同社が石油ストーブで培ってきた燃焼技術とタッチセンサーを融合させて、点火する仕組みが考えられた。木製の本体に2カ所設けられた黒丸のタッチスイッチを、両手で包み込むと点火する仕組みが心憎い。センサーを1カ所にしても点火そのものには問題ないが、2カ所あるからこそ、自然とその動作が生まれ、天然木の優しい手触りを感じられるようになっているのだ。炎を楽しむ時間は約15分。それもまた潔い。専用のタブレットを使えば、アロマオイルの香りを漂わせることもできる。

固形燃料が燃え尽きるのを待たずに消火したい場合は、付属の消火蓋を用いる。長い柄の付いた円盤状の消火蓋をガラスフード上部の開口部から落とし込み、固形燃料の真上に置けばいい。

だが、できるなら「特別な15分」を十分に堪能しようではないか。気持ちの切り替えをコンセプトにしたというが、使うシーンとして圧倒的にお薦めできるのは就寝前のひと時だ。照明を消し、リビングやダイニングのテーブルにこれを置いて木の温もりを手のひらに感じながら点火を待つ。やがて炎がゆらめき始めたら、あとは無心でそれを眺めるだけの時間。最初は今日一日のことなど考えていても、いつのまにか空っぽになり、静かで温かな気持ちに包まれる。火が消えたら、そのままベッドに入ろう。安らかな眠りにつけること請け合いだ。

 

固形燃料(12個入り¥990)を中央に置いて使用。専用タブレット(¥1,540~)で、5種の香りを楽しめる。

神原サリー
●新聞社勤務を経て「家電コンシェルジュ」として独立。豊富な知識と積極的な取材をもとに、独自の視点で情報を発信している。2016年、広尾に「家電アトリエ」を開設。テレビ出演や執筆、コンサルティングなど幅広く活躍中。
※Pen本誌より転載