世界中にファンをもつ、伝説の空港がついに閉港。

  • 文:河内秀子

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BERLINベルリン

世界中にファンをもつ、伝説の空港がついに閉港。

文:河内秀子

Photos:Hideko Kawachi

ドイツの首都の空港とは思えぬこぢんまりとした規模、特徴的な70年代デザイン、空港から市内中心部まで約8kmという近さ……。ベルリン子が愛してやまないテーゲル国際空港が、8年の延期を経て完成した新空港、ブランデンブルク国際空港のオープンに伴って、11月8日に閉港することが決定した。ビジターセンターの前には、別れを惜しむ人が長蛇の列をつくっている。

テーゲル空港がオープンしたのは、第二次世界大戦直後の1948年のこと。分割占領が行われていたベルリンで、ソ連が突如交通網を完全封鎖したため、空からの物資支援が行われることになったのがきっかけだ。既存のテンペルホーフ空港だけでは空輸が足りなくなり、急遽、第二の空港としてわずか3カ月で整備されたのが、この空港なのだ。

ベルリンの壁がつくられた61年から、いまはなきテンペルホーフ空港が手狭になったためにテーゲル空港の拡張工事が始まり、現在の特徴的な六角形のターミナルが74年に完成した。離着陸ゲートから出口やバスの停留所までの距離が短いのは、空港の規模が小さいからだけではない。独特の六角形は、この距離を短縮するために考え抜かれたデザインなのだ。国際線であっても、飛行機から手荷物受取場までのルートが非常に短いため、うっかり荷物を受け取らずに到着ゲートから出てきてしまった、という人が後を絶たない。近年は老朽化も激しかったが、70年代に建てられた近未来的な建築は世界中でファンが多く、「I♡TXL」というファングッズも販売されているほどだ。

新しいブランデンブルク国際空港は市内中心部から遠く、8年延期したために「10年前には新しかったデザイン」には、問題点が多く指摘される。テーゲル空港を惜しむ声が高まっているのも納得なのだ。

特徴的な六角形のメインターミナル。建築はGerkan, Marg and Partnersが手がけた。

メインターミナルの内部。コロナ禍で大半のショップが3月末から閉店し、寂しい感じのまま閉港となった。