僕らのファイナルファンタジーはやっぱりホット!? メルセデスAMG GT Rでキメる、V8“サムライ”ライフ!

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    東京車日記いっそこのままクルマれたい!

    第109回 MERCEDES-AMG GT R / メルセデスAMG GT R

    僕らのファイナルファンタジーはやっぱりホット!? メルセデスAMG GT Rでキメる、V8“サムライ”ライフ!

    構成・文:青木雄介

    編集者。長距離で大型トレーラーを運転していたハードコア・ドライバー。フットボールとヒップホップとラリーが好きで、愛車は峠仕様の1992年製シボレー カマロ改。手に入れて11年、買い替え願望が片時も頭を離れたことはない。

    インテリアを中心にマイナーチェンジが図られたAMG GT R。

    ロングノーズのショートデッキ。かつてはスポーツクーペの代名詞だったこの車型も、AMG GTでたぶん最後になる気がする。最後と言うと語弊があるけど、ロングノーズのハードコアなFRスポーツカーはこれで最後ってことですよ。世の大型スポーツクーペは4ドア化し、FR(フロントエンジン後輪駆動)からミッドシップへ、そして4WD化する流れは止められない。スポーツクーペに一家言ある北米のカーマスターたちは、ロングノーズをやめミッドシップ化された新型コルベットを見て言うわけですよ。「欧州かよ!」ってね(笑)。あははは。

    まぁ、それは冗談として、すっかり新車に興味をなくし粛々とクラシックカーに向かう、世界中のホットロッドガイの“ファイナルファンタジー”とも言える存在が、このAMG GT Rなのは間違いない。彼らにしてみれば、「俺たちが愛するロングノーズのリアルV8がメルセデスから出ちゃったよ」って感覚だろうし(笑)、むろん北米のマーケティングに焦点を当てたプロダクトという意味で、「V8のロングノーズ」にこだわるAMGは確信犯でもある。

    静かなV8エンジンが幅を利かせる中、AMG GT Rのエンジンサウンドときたらヴァン・ヘイレンの「ホット・フォー・ティーチャー」よろしく、五臓六腑に染み渡る正統派V8サウンド。街角でパワーを持て余しながらテールスライドさせ、カウンターを当てつつフラフラと走り去る「ワイルド・イン・ザ・ストリート」(笑)。そんなロングノーズなV8マシンを駆るドライバーをイメージするなら、映画『フォードvsフェラーリ』のマット・デイモン演じるキャロル・シェルビーと言ったらわかりやすいか。

    実際、キャロル・シェルビーが存命していたらAMG GT Rを大いに気に入っていたと思う。ロー&ワイドでロングノーズを強調しながら、その走りはレーシングカー、AMG GT3の魂を引き継いだ正真正銘のサーキット仕様なのだから。アルミのスペースフレーム構造のボディに、専用にチューンされたドライサンプ式のM178型4LV8エンジンを、コックピットにめり込ませるように近づける。このV字バンクにターボチャージャーを挟んだ「ホットインサイドV」レイアウトは、コンパクトさと連動性のよさ故にAMG GTのためにあるエンジンレイアウト。

    ミッションはリアに配置したトランスアクスル式で、理想的な48:52の重量バランスを確保。AMG GT Rは後輪操舵も付いているけど、タイトなコーナーでは自らカーブを回り込むような動きをするから競技者向けの仕様と言えるはず。このプロポーションにこだわらなければ、AMGはさらに安定して速い4WDのスーパースポーツをいくらでもつくれるはずなんだ。でも、こだわる。なぜならロングノーズは、現代におけるサムライの生き方だから(笑)。もう、これに尽きるんだ。

    スタイルも走りも最高な、V8クーペのハードコアモデル

    でも武士は食わねど高楊枝なんて、格好だけのサムライじゃない。ロングノーズの大型ボディに、ドイツのニュルブルクリンクサーキットの最速タイムを叩き出す情熱が注がれているから、どうしてもハイパワーFR特有の癖は隠しきれない。幅325mmの極太リアタイヤに、入念に段階調整が入ったトラクションコントロールをもってしても、不意を突かれるリアの滑りを完全に抑えることは難しい。このスリルを担保にしているところが、最近の4WDスーパーカーとはひと味違うし、愛すべき理由でもあるんだ。

    4WDのAMG GTの4ドアと乗り比べれば、その違いは“ちょい乗り”瞭然(笑)。4ドアのほうが遥かに扱いやすいと感じるだろうし、安心して運転できるはず。まともな乗り手はそっちを選ぶだろうから、それがロングノーズのFRハードコアは「これで最後」って確信につながっているわけだけど、まぁ、そんなことはどうだっていいんですよ(笑)。

    はっきり言って、こんなクルマをつくれるメーカーは、ビッグ3はもちろん世界中見渡したって他にない。本来はキャロル・シェルビーがやるはずだった仕事をAMGがしているんじゃないかって、声を大にして言いたいよね(笑)。まずギアレシオがハイスピード仕様だから、自然吸気のOHVエンジンよろしく、アクセルを踏み込むと一瞬にしてトルクがあふれ出すような妙味のある加速感が味わえる。

    タイヤの温度を気にしつつ、リアに全神経を集中。アクセルワークでイメージ通りの軌道を描く軽快な車体コントロールが味わえ、ドンと踏めば後ろから蹴りつけられるような、めまいがするような加速。もちろんメルセデスのロングノーズらしいマナーにのっとって、シートに沈み込むようにしてクルーズしながら、海岸線を流すのも最高にカッコいい。そしてそっとパートナーの手を取る、グランツーリスモ(GT)なハンサムガイって感じ(笑)。そんなV8クーペの理想とも言える、「FRハードコアが新車で買える」奇跡に感謝でしょう。

    言うなればV8マイスターによる、V8エンジンらしいスタイリングをした最高のV8ハードコア。身に纏ったファンタジーが、リアルなパフォーマンスで裏打ちされていくさまは「V8エンジンの化身」と言いたい。だからお願い。絶対にAMG GTの4ドアみたいに、ハイブリッド付きの直列6気筒エンジンは「載せないで」って感じなんだよね(笑)。

    • レースモードでは、時速80kmを超えると車体底部のウィングが作動する。

    • ドイツのニュルブルクリンクサーキットに由来する、専用色のグリーンヘルマグノ。

    • V8エンジンをモチーフにしたフロアコンソールを装備。

    • 9段階のトルク調整が行えるダイヤル。

    • 自慢のロングノーズが際立つサイドビュー。

    • AMG GT Rはワイドボディ化され、エントリーモデルより全幅は55mm広い。

    ●サイズ(全長×全幅×全高):4550×2005×1285mm
    ●エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
    ●排気量:3982cc
    ●最高出力:585PS/6250rpm
    ●駆動方式:FR(フロントエンジン後輪駆動)
    ●車両価格:¥24,260,000(税込)

    ●問い合わせ先/メルセデスコール
    TEL:0120-190-610
    www.mercedes-benz.co.jp