50年目を迎えた、日本生まれのベストセラー

  • 文:佐藤早苗
  • 編集:山田泰巨
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Vol.67
50年目を迎えた、日本生まれのベストセラー
ニーチェアエックス

新居猛

文:佐藤早苗 編集:山田泰巨

新居猛が1970年にデザインし、今年で50周年を迎えた「ニーチェアエックス」はコンパクトでシンプルな折りたたみ式の椅子。新居は「座り心地を落とさず、とにかく安く、道具のように役に立ってこそ椅子」という信念のもと、「多くの人から愛される椅子づくり」を目指したといいます。

シートの一番低いところは床上約20cm。ゆったりと包み込まれる感覚と、床に近い低めの目線が落ち着きます。「ニーチェアエックス」サイズはW610×D765×H860×SH350mm、折りたたみ時はW150×D765×H1160mm

1970年の発表以来、国内外で評価され、100万脚以上の出荷を誇ります。この椅子のデザイナーで名前の由来でもある新居猛は、徳島で剣道具を製造する家に生まれました。デンマーク家具に影響を受けて椅子作りを始めた彼は、「安くて丈夫で座りやすく、どこにでも置けて折り畳める。食べ物でいうならライスカレーのような椅子をつくりたかった」という言葉を残しています。

その言葉通りの存在となった「ニーチェアエックス」は、X型に組まれたフレームと木製の肘掛け、キャンバス地のシートを4本のネジで固定するだけで完成し、安定したゆったりとした座り心地を実現しています。折り畳んだ時に自立するのも特徴のひとつ。「ニーチェア」の名付け親であり、監修を行なった北欧デザイン研究の第一人者、島崎信は良い椅子の条件として、座りやすい、丈夫、軽い、価格が妥当、フォルムが美しいことを挙げていて、さらに折り畳んだときの美しさや安定感がある「ニーチェアエックス」はすべてを兼ね備えた椅子と評価します。パーツ交換やシートの取り替えも簡単で、ずっと使えるロングライフデザインのお手本のような存在です。

フラットパックで届くシートと脚部を、ネジ4本で留めるだけで組み上がるシンプルな構造。約6.5kgと軽く、折りたたむと約15cmの薄さになり自立します。4本脚のチェアに比べて床を痛めにくく、和室にも合わせやすい点も魅力です。

脚をカーブさせた「ニーチェア ロッキング」は体重移動がしやすく、シートハイも高めで立ち上がりやすくなっています。サイズはW610×D760×H920×SH430mm。