ウディ・アレンが映画『アニー・ホール』で着こなした、トラッドな愛用品、オックスフォードのワークブーツ

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    ウディ・アレンが映画『アニー・ホール』で着こなした、トラッドな愛用品、オックスフォードのワークブーツ

    文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一
    イラスト:Naoki Shoji

    第4回 オックスフォードのワークブーツ

    1977年制作の映画『アニー・ホール』。NYを舞台に男女の恋と別れを綴ったラブストーリーで、映画の出来も素晴らしいのですが、主演したウディ・アレンとダイアン・キートンの着こなしは、いまでもとても参考になります。ウディ・アレンは、いつもツイードジャケットに小柄のチェックシャツ、パンツはプリーツが入ったチノパンを合わせ、黒のセルフレームと相まって、ナードな雰囲気を醸し出しています。ダイアン・キートンの着こなしもセンス抜群です。太めのチノパンにベストを合わせたマニッシュなスタイルで、世界のファッショニスタを魅了しました。映画の中でも、リアリティある彼らの着こなしは、重要な役割を果たしています。今月紹介するのは、まさに1970年代から80年代にかけてのスタイルのお手本ともいえる、ウディ・アレンの愛用した品々です。第4回は彼が映画で履いていたワークブーツです。

    モデル名は「#9895 アイリッシュセッターオックスフォード 」が正式。色は「ゴールドラセット セコイア」。1950年代に6インチのブーツ、チャッカブーツなどとともにリリースされたモデルが原型です。白のクレープソールがトレードマークです。¥40,824(税込)/レッド・ウィング

    映画の横に長い画面サイズでは、俳優の足元まで映ることは稀です。しかし『アニー・ホール』は、1970年代のニューヨークのトレンドを象徴する映画です。ツイードのジャケットを着こなすウディ・アレンが足元をどんな風に装っているか、気になるのも当然です。映画の中で何度か、足元まで映るシーンがあります。画面から見る限り、ウディ・アレンがこの映画で履いていた靴はワークブーツ、しかもオックスフィード、短靴タイプだと思われます。アッパーの革は履き古したままで、ソールもだいぶ減っているように見えますが、モカシン縫いを備える靴を確かに履いていました。
    1905年、アメリカのミネソタで誕生したブーツメーカーの老舗「レッド・ウィング」に、似たようなモデルを発見しました。「レッド・ウィング」の中でも名品の誉れ高い「アイリッシュセッター」シリーズのオックスフォードで、誕生は1954年。当時の品番は「#895」でした。『アニー・ホール』でウディ・アレンが履いていた靴は「#895」の素材に使われた赤茶の「オロラセット」よりは明るく見えますが、同じような色合いのオックスフォードも「レッド・ ウィング」はつくっていました。上の写真は当時のディテールを忠実に再現し、通常よりも黄色味が強い、「ゴールドラセット セコイア」の革を採用した「#9895」です。この靴を合わせれば、ウディ・アレンの映画での雰囲気が堪能できるはずです。

    「ゴールドラセット セコイア」のアッパーに組み合わされたのは、白の「トラクショントレッドソール」と呼ばれる白のクレープソール。底はグッドイヤーウエルト製法で縫われているので、ソールの張り替えも可能です。

    「アイリッシュセッター」のほかのブーツと同じく、2つのパーツを縫い合わせたモカの仕様。立体的な縫製が、このブーツに特別な印象を与えます。

    ライニングのない一枚革のヒールが特徴的です。インソールにはブランドのマークが刻印されています。

    問い合わせ先/レッド・ウィング・ジャパン:TEL.03-5791-3280