Vol.5 映像で拓く地域の未来
こんにちは、別所哲也です。
秋の色が深まる季節、澄んだ秋の空気を胸いっぱいに吸い込んで、紅葉を眺めて歩くのはとても清々しいですね。季節の移ろいを身近に感じるのは、日本の良さの一つではないでしょうか。
さて、政府観光局が発表したところによると、日本を訪れる外国人観光客が今年は10月30日で2000万人を超えたそうです。僕は20代のころから映画を通して国際交流を重ねてきましたが、異なる文化的背景を持つ人同士が出会って語り合う時の面白さは、なにものにも代えられない魅力があります。
東京を歩いていてもたくさんの外国人観光客を見かけますが、彼らの足はいま地方にも向かっているようです。日本ならではの自然体験や文化体験を求めて旅をする外国人と、もてなす各地の人々の間によい関係が生まれていけばいいと心から思います。
僕が仲間たちと毎年6月に開催しているショートショート フィルムフェスティバル & アジアでも、地域の観光を応援するために「観光映像大賞」という部門を設けて全国各地の魅力的な観光プロモーション映像を表彰しています。2012年に始まり、5回目を迎えた2016年は行定勲さんが監督をし、橋本愛さんや高良健吾さんが出演した『うつくしいひと』が受賞しました。熊本に縁のある映画関係者が熊本在住のスタッフたちと力を合わせて作った一作です4月の熊本地震で傷ついた故郷のために、チャリティ上映が各地で行われたことは記憶に新しいところです。
また、ショートショート実行委員会が運営する観光映像投稿サイト「旅もじゃ」には、11月上旬の時点で約2300件もの動画が投稿されています。読者の皆さんにも観光動画を観ていただいて、旅のきっかけにしてもらえればとてもうれしいです。
ところで、国立社会保障・人口問題研究所の試算によると、2060年の日本の人口は2010年比で2/3の8,674万人にまで減るそうです。また、元岩手県知事の増田寛也さんが2014年に出したレポートでは全国896の自治体が「消滅可能性都市」としてリストアップされ、大きな話題となりました。少子高齢化は現在進行形で進んでいる問題です。
そんな中で、全国の地方自治体も生き残りのために地域プロモーションに力を入れています。僕たちも映画の持つ力をそうした地方の課題解決につなげていければいいと思って活動をしています。たとえば最近では茨城県や埼玉県川越市などと連携してプロジェクトを進めています。
僕も出身は静岡県島田市で、地方出身者です。慣れ親しんだ場所がなくなってしまうのは、とてもさみしく感じます。特に映画館は地域の文化センターですが、島田市にいくつかあった地元の映画館も今は閉館してしまいました。今後、日本で映画が生きた文化として親しまれ、新しい才能が生まれていくためにも、文化の担い手となる人や場所がなくなってしまうのは防がなければならないことだと思っています。
映画は人と人とを結ぶ共通言語です。国境も世代も越えて、映画を軸に多様な人が入り混じって社会をつくっていく。映画で拓く地域の未来を僕たちは描いています。
今回リコメンドするショートフィルムをチェック!
『ハリーの初恋物語』
作品時間: 10:10 制作国:アメリカ
監督:Mark Nickelsburg
ニューヨークで「愛」を見つけるのはとっても難しい、とくに18カ月の赤ちゃんにとってはなおさら。