誕生から25年を迎えたフリースは、「ユニクロ」になにをもたらしたのか?

  • 写真:加藤佳男
  • スタイリング:小野塚雅之
  • ヘア:勝健太郎
  • 文:海老原光宏

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ユニクロがフリースの発売を開始したのは1994年。いまではユニクロの代名詞となったこの製品は、どのように進化を遂げているのか。また、数々のデザイナーとのコラボで培われたクリエイティビティは、ユニクロになにをもたらしているのだろうか。改めてひも解き、検証する。

今年25周年を迎えるユニクロのフリース。着心地、仕様を追究し、ユニクロを代表するアイテムとなった。著名デザイナーが手がける各コレクションでもその素材感を活かしたアイテムを発表している。やわらかな質感の写真のフリースは、クリストフ・ルメールとのコレクションによるもの。

ヒートテック、エアリズム、ウルトラライトダウン……。どれも日本を代表するグローバルブランド・ユニクロの主要アイテムだ。では最もユニクロを象徴するアイテムといったらなんだろう? それはやはり、今年25周年を迎えたフリースではないだろうか。

ユニクロは、フリースによって“ファッション”ブランドになったといっても過言ではない。前述したアイテムはどれもフリース後に話題となったもの。究極のベーシックであり、25年経ったいまなお進化するユニクロのフリースとは、同社にとってどのような存在なのかを探ろう。

ユニクロが、フリースをタウンユースへと導いた。

1994年から始まったユニクロのフリース。いまも同モデルは健在だが、仕様面で細かいマイナーチェンジを繰り返している。特に機能性の探求には余念がない。写真は1997年のハーフジップタイプのフリース。

ユニクロはもともと山口県のカジュアル衣料品店から発祥した。当初は買い付け品のみの扱いだったが、徐々にSPA(製造小売業)へ転換し、企画・生産・販売すべてまかなう現在の形となった。まだ過渡期であった1994年、自社企画のフリースがお目見えする。価格は1900円で、当時各地の店舗ではフリースを求める行列ができたことを覚えている。現在でも同様のアイテムが1990円と、さほど値上がりしていないことに驚きだ。

話題となった2000年のフリース50色キャンペーン。オンラインのみで50色揃うという点も、デジタル施策で一歩先行くユニクロの先見の明を感じさせる(一部のカラーは店頭でも販売)。

そもそもフリースとは、羊毛のようにモコモコした起毛生地のこと。それが現在ではポリエステル素材を起毛した、あの生地を指すようになった。ユニクロが発売する以前はおもにアウトドアブランドが登山・野外用でリリースし価格も高額だったが、ユニクロによって一気にタウンユースアイテムへと変化。1998年にはフリースをメインとした原宿店がオープン。そして2000年には「フリース50色キャンペーン」を展開し、快進撃を続けた。

フリースはトップスだけでなく、ボトムス、グローブ、スリッパなどさまざまなアイテムで登場。現在のユニクロのコンセプト、生活を豊かにする服という意味を込めた「LifeWear(ライフウエア)」につながる展開だ。写真は2001年のフリースパンツ。
左は2001年の軽くなめらかな肌触りとなったマイクロフリース。右は2008年のもので、毛足長めに進化したファーリーフリース。リアルファーの使用がためらわれる現在、多用されている。

商品のクオリティ向上と両輪を回すように、マーケティングコミュニケーションも進化させ、「フリースに自信あり。」といったキャッチコピーや芸能人を起用したCMなどで爆発的ヒットを記録。ユニクロのフリースは社会現象にもなった。20周年を迎えた2014年の記者発表で柳井社長自ら「累計販売枚数3億枚を目指す」と発言。いまでは世界中にユニクロのフリースが億単位で存在していると考えられる。

時代に合わせて広がる、フリースのバリエーション

今季のレギュラーラインのフリースはゆったりしたシルエットでトレンド感をプラス。左のシープ調ボアフリースカーディガンはボリューミーな袖がリラックスした雰囲気。アウターにもインナーにも重宝する。右のフルジップモデルは袖口を少し補足し、隙間風を防御。左から、ボアフリースジップカーディガン¥4,389(税込)、フリースフルジップジャケット¥2,189(税込)/ともにユニクロ(ユニクロ TEL:0120-170-296)

誕生から25年経った現在、メンズ、ウイメンズ、キッズでさまざまな型を展開するまでに拡充。フワフワとしたボアフリースやファーのようなファーリーフリースなどバリエーション豊かに展開。なかでも現代のサステイナブルなトレンドもあってか、ラグジュアリー感のあるボアやファーリーを用いたモデルが多く見受けられる。また、パイピングで締まった袖口、擦れる部分はチェーンステッチで強度向上、ポケット袋布も起毛素材を用いるなど、仕様面も当初より進化している。

襟の内側には芯を張り、きれいなスタンドカラーとなるように配慮している。ファスナーは目立たないよう縫製と色みを調整し、スポーティな印象に。引き手にはタブを配し、グローブ着用でも開けやすい仕様。細かい点にユニクロの配慮がうかがえる。
かつてポケット袋布はメッシュだったが、いまでは起毛素材を用い、温かさをキープ。また、バルキーな繊維を噛まないようにファスナーに玉縁をプラスして縫製。細部までユーザー目線が行き届いている。

最近のユニクロに感心するのが生地・縫製はもちろん、付属品のファスナーも抜かりがないこと。服に合わせた質感のものをセレクトしているのだ。この記事に登場するフリースにもテイストに合わせたファスナーが使われているので写真に注目してほしい。デザイナーズブランドでさえ、こういった目立たない副資材では手を抜くことがあるが、最近のユニクロはここまでしっかりデザインが行きわたっているのだ。

フリースはデザイナーズブランドとのコラボレーションコレクションも豊富に発表。過去のアンダーカバーとのコラボ「UU」でも高橋盾らしいミリタリーテイストのフリースが登場した。フリースはユニクロに欠かせないカテゴリーとして、デザイナーたちのクリエイティビティを刺激している。


上写真左:ウールカーディガン¥4,389(税込)、クルーネックTシャツ¥649(税込)、スラックス¥4,389(税込)/ともにユニクロ(ユニクロ) ベレー帽¥15,400(税込)/ロレール(クオリネスト TEL:03-6427-1977)。右:シャツ¥2,189(税込)、テックパーカー¥6,589(税込)、ホワイトデニムパンツ¥4,389(税込)/すべてユニクロ(ユニクロ) 眼鏡¥44,000(税込)/アイヴァン 7285(アイヴァン 7285 トウキョウ TEL:03-3409-7285) シューズ¥29,480(税込)/リプロダクション オブ ファウンド(アイ ファウンド TEL:03-6434-7418)

「ユニクロ ユー」は、エフォートレスな大人の服。

オーバーサイズがリラックスな雰囲気を演出するユニクロ ユーのフリースジャケット。レギュラー商品よりさらにオーバー。アウターの上にもレイヤリングできるのでさまざまなシーンで重宝する。ラウンドした裾が柔和な表情だ。ボアフリースリバーシブルジャケット¥7,689(税込)/ユニクロ ユー(ユニクロ TEL:0120-170-296)※一部店舗にて発売

クリストフ・ルメールがパリからディレクションする、もうひとつのユニクロというべきユニクロ ユーは、ベーシックにエレガンスを添えたエフォートレスな大人の服。ルメールはエルメスのウイメンズデザイナー時代も、そして自身の名を冠したブランド「ルメール」でも変わらず、余分な装飾はせずに素材とゆったりしたフォルムで穏やかな空気感を醸成する。ユニクロ ユーは、「ベーシックなだけでは物足りないが、デザインはそれほどいらない」という層のニーズをつかんでいる。ルメールは一歩先のベーシックを提案してくる印象だが、それがユニクロと親和するのだろう。

フロント開きには、ボアを噛まないよう務歯(むし)の手前にテーピングを施している。ナイロンジップポケットは、表側のデザインでは唯一のディテール。1点に絞ったアクセントが機能的なのもエフォートレスなユニクロ ユーらしい。
裏返すとナイロンのリップストップ生地となる。撥水仕様なので、軽い雨なら防いでくれる。表がフワフワのボアフリースなので、裏返しても着心地は最高。

今秋冬のフリースブルゾンも、身幅が広く、袖が太めで、着込んだ服の上にオンできる。リバーシブル仕様で裏は撥水仕様のリップストップ生地。雨が降ってきたら、裏返して簡易レインウエアとして使用できるため、オーバーサイズが功を奏しているのだ。しかも内側がフリースになるため、保温性も抜群。こういった点からもデザインと機能を両立させるユニクロの理念を感じさせる。いずれレギュラー商品としても登場しそうなディテールだ。というのも、これまでユニクロ ユーで試行し、追ってレギュラーラインで近いデザインが登場するケースが見受けられるからだ。


上写真:ブロードストライプシャツ¥2,189(税込)、ハイネックカットソー¥1,100(税込)、デニムパンツ¥4,389(税込)/すべてユニクロ(ユニクロ) 眼鏡¥77,000(税込)/10 アイヴァン(アイヴァン PR TEL:03-6450-5300) シューズ¥25,300(税込)/クラークス オリジナルズ(クラークスジャパン TEL:03-5411-3055)

「ユニクロ アンド エンジニアド ガーメンツ」の男心をくすぐるディテール

2シーズン目となる「ユニクロ アンド エンジニアド ガーメンツ」。3つのフリース生地をコンビネーションした左のジャケットはアメカジ風に着こなしたい。右のノーカラーコートはきれい目な大人カジュアルを演出してくれる。左:クレイジーパターンフリースジャケット¥4,389(税込) 右:フリースコート¥5,489(税込)/ともにユニクロ アンド エンジニアド ガーメンツ(ユニクロ TEL:0120-170-296)※一部店舗にて発売、店舗により在庫状況は異なる

今シーズンで2シーズン目、そして初の秋冬コラボとなるユニクロ アンド エンジニアド ガーメンツがフリースのカプセルコレクションを10月11日に発売し、世の男たちが注目している。

「エンジニアド ガーメンツ」は、ニューヨークを拠点とするデザイナー鈴木大器率いる武骨なディテールの細かさが光るブランドだ。アメリカのカジュアル、クラシック、ワーク、ミリタリーなどの本格的要素を現代のアーバンファッションに落とし込み、生産もほぼニューヨークというこだわりようだ。今回のコラボレーションではジャケット、コートなど4型を発売。”ガーメンツ“の顧客はこだわりをもつ30代以上の男性だ。コラボによって、ユニクロのこだわりが彼らにも届くのだろう。

3種類のフリースにナイロンを組み合わせたコンビネーションジャケットは、首まわりや肩ヨーク、ひじ当てなどに耐久性があり毛玉にならないナイロンを配している。ディテールにこだわるエンジニアド ガーメンツらしい。
ノーカラーコートは、表面はなめらかなマイクロフリース、裏面はフワフワのボアフリースの2枚をボンディングしている。そのため生地に張りが生まれ、アウター感を高めている。また、開け閉めが頻繁に行われる前立てには耐久性のあるナイロンを配置し、細かい部分も抜かりない。

リラックスした抜け感のあるノーカラーコートは、ミリタリーアウターのライナーを彷彿させるデザイン。前合わせはボタンとジップでフィット感を調節できる。一方、白眉なのがフリース3種とナイロンで切り替えたジャケットだ。いままでシンプルなものが多かったフリースコレクション。これによりデザイン性が高い服を求めるファッション好きの男性も取り込むだろう。しかもそのデザインは、単なる表面的装飾ではない。マイクロ、ボア、ファーリーとフリース各種をランダムに用いたこのジャケットは、米軍ECWCS(Extended Cold Weather Clothing System=拡張式寒冷地被服システム)のコールドウェザーフリースジャケットからインスパイアされたと見受けられる。クレイジーと表現したくなるフリース3種のコンビネーションは、ユニクロフリースのクロニクルともとらえられ、服のヒストリーを重んじる鈴木らしい。こういった点もオタク気質なアメカジ好きを魅了するはずだ。


上写真左:クルーネックニット¥3,289(税込)、グレンチェックスラックス¥4,389(税込)/すべてユニクロ(ユニクロ) スニーカー¥13,200(税込)/コンバース(コンバースインフォメーションセンター TEL:0120-819-217) 右:カシミアクルーネックニット¥10,989(税込)、オックスフォードシャツ¥2,189(税込)、ジョガーカーゴパンツ¥3,289(税込)/すべてユニクロ(ユニクロ) 眼鏡¥31,900(税込)/オリバーピープルズ(ルックスオティカジャパン カスタマーサービス TEL:0120-990-307) マフラー¥37,400(税込)/ジョンストンズ(ジョン スメドレー銀座店 TEL:03-3571-0128) ソックス¥3,630(税込)/パンセレラ(真下商事 TEL:03-6412-7081) シューズ¥19,800(税込)/ティンバーランド(ティンバーランド/VFジャパン TEL:0120-953-844)

アウトドアをモードに昇華させた、「ユニクロ アンド ジェイ ダブリュー アンダーソン」

10月18日に発売された、アウトドアアイテムにオマージュを捧げるような今シーズンのユニクロ アンド ジェイ ダブリュー アンダーソン。色、柄の組み合わせ、サイズ感、すべてが計算されつくした印象だ。左から、ボウフウボアフリースベスト¥5,489(税込)、フリースプルオーバー¥3,289(税込)/ともにユニクロ アンド ジェイ ダブリュー アンダーソン(ユニクロ TEL:0120-170-296)

北アイルランド生まれのデザイナー、ジョナサン・アンダーソンのシグニチャーブランド「ジェイ ダブリュー アンダーソン」はロンドンファッションを引っ張るブランド。ユニクロとのコラボレーションではリアルクローズだが、彼らしさを配色、柄使い、シルエットや切り替えなどほんのちょっとした部分にひとつまみの隠し味のように取り入れ、モードをくゆらせる。ロエベのクリエイティブ・ディレクターも務めるアンダーソンは、シグニチャーではファッション概念への挑戦、ロエベでは贅を尽くした創造、ユニクロではリアルの追究をしているのではないだろうか。

切り替えにより立体的に造形したボリューミーなフード。内部がボアフリースなので頭部をしっかり保温してくれる。
クラシカルなフリースをカラーリングでモダンにアップデート。ボタン開きとパイピング、そしてしっかり立つスタンドカラーがクラシックな印象を醸す。襟の縫い目はテープで隠し、着用時にストレスが掛からないよう工夫が施されている。

今シーズンはテーマに「グレイト ブリティッシュ アウトドア」を掲げている通り、アウトドアエッセンスをモードにプラス。いうなれば既存アウトドアギアをモードに昇華した印象で、出色の出来だ。いままでのユニクロとのコラボではトレンチやブルゾンなど、オーセンティックアイテムをアップデートさせてきた印象がある。今回、定番ハーフジップの開きをボタンオープンにしたプルオーバーは、スタンドカラー、パイピングがクラシカルな印象でノーブル。ボアのベストはアウトドアのディテール。ボアに防風フィルムを挟み込み、抜群の暖かさ。両者ともアンダーソンらしいユニークなバイカラーで新鮮な印象を与えている。

この25年で大きな進化を遂げたユニクロのフリース。他のアイコンアイテムより素材、シルエットでデザインの自由度が大きいためかバリエーションがあり、さまざまな着こなしに挑戦するのが楽しい。だからこそ、デザイナーとのコラボレーションでも彼ららしさが光るアイテムが生まれるのだろう。

ミリタリーにもベーシックにもアウトドアにもスーツの上にも……。あらゆるライフスタイルに対応する柔軟性は、まさにユニクロが掲げる洋服の理念「LifeWear(ライフウエア)」を象徴している。マスな一般層から、エフォートレスな服を好む大人、こだわりの男たち、ついにはモードフリークまでもユニクロのフリースは取り込むのだ。海外展開に積極的なユニクロは、柔軟なフリースで世界を席巻していくのはないだろうか(暑い地域は別としても)。30周年を迎える頃にはどうなっているか、想像は広がり、さらなる期待が高まる。


上写真左:タートルネックセーター¥4,389(税込)、コーデュロイパンツ¥4,389(税込)/ともにユニクロ アンド ジェイ ダブリュー アンダーソン(ユニクロ) ソックス¥2,750(税込)/ロトト(ジャーミネーション TEL:06-6585-9660) スニーカー¥15,400(税込)/ハイテック(ムーンスター カスタマーセンター TEL:0800-800-1792) 右:中に着たプルオーバーチェックシャツ¥3,289(税込)、ジョガーパンツ¥4,389(税込)/ともにユニクロ アンド ジェイ ダブリュー アンダーソン(ユニクロ) ハイネックカットソー¥1,100(税込)、ニット帽¥1,089(税込)/ともにユニクロ ソックス¥1,870(税込)/ロトト(ジャーミネーション TEL:06-6585-9660) スニーカー¥28,600(税込)/ニューバランス(ニューバランス ジャパンお客様相談室 TEL:0120-85-0997)

●問い合わせ先/ユニクロ TEL:0120-170-296
www.uniqlo.com

ユニクロ ユー
https://www.uniqlo.com/UniqloU19fw

ユニクロ アンド エンジニアド ガーメンツ(※一部のサイズは完売)
https://www.uniqlo.com/jp/store/feature/uq/engineeredgarments

ユニクロ アンド ジェイ ダブリュー アンダーソン
https://www.uniqlo.com/jwanderson19fw

誕生から25年を迎えたフリースは、「ユニクロ」になにをもたらしたのか?

  • 写真:加藤佳男
  • スタイリング:小野塚雅之
  • ヘア:勝健太郎
  • 文:海老原光宏

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