インスタグラムをきっかけにデビューし、世界を舞台に大活躍。ラグジュアリーブランドからの信頼も厚い気鋭のフォトグラファー、それが福田洋昭さんです。持ち物や着こなしにも注目が集まる、スタイルのあるクリエイターの視点とこだわりに迫ります。

【Instagram】www.instagram.com/hirozzzz
1924年、イタリア北部クアローナに設立され、自社一貫生産にこだわる高級服地メーカーとして知られる「ロロ・ピアーナ」。現在はテキスタイルやアパレルのみならず、バッグやシューズも含めた最高品質のアイテムを展開するラグジュアリーブランドへと進化し、モダンでエレガントなスタイルをつくり出しています。「スタイルをつくる」といえば、いま世界中で最も熱い注目を集めるフォトグラファーである福田洋昭さんもまた、写真表現による孤高のスタイルを創造しているクリエイターのひとり。そんな両者の出合いで見えたものとは──。
コート¥331,560(税込)、ニット¥150,120(税込)/ともにロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ銀座並木通り本店)
快適さは譲れない。でも、それだけでは満足できない。

先駆的インスタグラマーとして話題となり、世界的に注目を集める写真家となった福田洋昭さん。自動車メーカーやビッグメゾンのファッションブランドなど、グローバル企業とのコラボレーションも数多く手がけ、現在は東京オリンピック関連のプロジェクトにも参加しています。その足元には、ロロ・ピアーナが特許を取得した紐なしのアンクルブーツ「オープンウォーク」。都会的で洗練されたルックスに加え、スリッポンのように簡単に着脱が可能で、しかもしっかり包み込むようにホールドしてくれるというすぐれものです。

「服はとにかくラクで動きやすいものがいい。ただ、いい年齢になってきたし、被写体や撮影現場との関係性もあるから、だらしない格好はできません。シャープだけどストレッチの効いているもの、リラックスしているのに上品に見えるものが好みですね」と語る福田さんには、スポーティなコートにボーダーニットなど、涼やかなマリンテイストのエレガントカジュアルがよく似合います。

そんな福田さんを一躍有名にした写真共有アプリのインスタグラムですが、意外にも作品発表のプラットフォームとして選んだというわけではないそう。
「高校や大学ではアートクラスに通うなど写真だけでなくアート全般に興味がありましたが、クリエイティブなことを仕事にできるとは思ってもいませんでした。プライベートで浮き沈みの激しい時期を過ごしていた8年くらい前、なにか趣味にできることはないかと探していた時に、偶然見つけたのがインスタグラム。自分が見ている景色、感情を刺激する場面を大切な人と共有できるのが嬉しかったんです。不特定多数の誰かとつながりたかったわけでも、写真を見てほしかったわけでもないんですよ。フォロワーも100人、1000人と増えていく頃は確かに面白かった。でも『いいね』をもらおうとか、ウケそうな写真を撮ろうと考えたことは一度もありませんでした」

趣味だったはずのインスタグラムでしたが、持ち前のアーティスティックな感性と無類の凝り性を発揮し、どっぷりハマってしまった福田さん。その追求の姿勢は趣味の域を軽く超え、職業カメラマンのように日々貪欲に、センスとスキルを磨いていったのだといいます。
「最初期のインスタグラムというのは、世界中のクリエイティブな人々がお互いを刺激し合い、切磋琢磨するコミュニティのような面がありました。僕の場合は、なによりも自分自身が写真を好きだったから、創造力を最大限に活かせるまで毎日外に出て撮影をし、さまざまなことにトライしながら、ストリートや建築物の撮影を身につけていったんです」
コート¥331,560(税込)、ニット¥150,120(税込)、パンツ¥70,200(税込)/すべてロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ銀座並木通り本店)
スタイルがなければ、共感もリスペクトも得られない。

人物、建築、アートなど、テーマを決めたらそれだけを徹底的に撮り続けて追求するというスタイルで、自らの作風を創り上げていった福田さん。プロ顔向けの技術はいつしか多くの企業の目に止まり、コラボレーションの依頼がひっきりなしに舞い込むこととなりました。
「ニューヨークという街に暮らしていたことも、大きかったかもしれません。人もモノも風景も、興味深い素材の宝庫でしたから。ただ真剣に取り組んではいたものの、当初はお金をもらって写真を撮るなんて考えもしませんでした。撮りたいものを撮りたいように撮らなければ、自分が撮る意味はないと思っていましたしね。でも、ある高級ブランデーメーカーから『商品ではなく、インドへの旅の途中の経験を好きなように撮ってほしい』というリクエストをいただいた時、それならやってみたいなと思ったんです」

コマーシャリズムにおもねらない高潔な創作姿勢こそ、福田さんが多くの支持者をもつ大きな理由。スタイルを貫く妥協なきクリエイション──口で言うのはたやすいことですが、これほど実践するのが難しいことはありません。福田さんがこの日手にした「ザ スーツケース ストライプ トート」も、テキスタイルの分野において妥協なきクリエイションを続けてきた、ロロ・ピアーナらしいバッグです。象徴的なストライプ模様は、1970年代から90年代にかけて世界中を飛び回っていた、ロロ・ピアーナのセールススタッフたちが使うトランクケースに描かれていたもの。撥水・防汚加工が施されたコットンリネンのキャンバスボディと、内側のポケットや底、持ち手部分などにあしらわれたリッチなレザーが好相性で、ひと際ラグジュアリーな印象です。

福田さんのこだわりは、使用するカメラの変遷からもうかがい知れます。スマートフォンからスタートして、より高い描写力とレンズのバリエーションを求めてCANONの6Dへ。そこから小ぶりなサイズで機動性に優れるSONYのα7シリーズ、レンズ固定ゆえ撮影に集中できるLeica-Q。そしてフィルムカメラのCONTAX T2というふうに。
「いまはフィルムカメラの味わい深い雰囲気を楽しんでいます。まだインスタグラムで公開するところまでいっていませんが、早くデジタルと同じレベルで思い通りの表現ができるようになれたらいいですね。でも実はカメラというのはそれほど大事ではなくて、いちばん大切なのは自分らしい視点で撮ること。そして感情をのせてストーリーのあるシーンを切り取ることなんです」

福田さんの写真には、見る者の心を揺り動かす、詩的な情感と繊細なムードが漂います。作為的ではないけれど、細部に至るまで完璧に計算されたストーリーのある写真たち。それは、高度に研ぎ澄まされた上質を追求する、ロロ・ピアーナのものづくりにも通じます。ただ高級なだけでも、美しいだけでもない。さまざまな思いやメッセージが込められた製品だからこそ得られる、真の充足がそこにあるのです。
ニット¥155,520(税込)、パンツ¥70,200(税込)、シューズ¥87,480(税込)/すべてロロ・ピアーナ(ロロ・ピアーナ銀座並木通り本店) 腕時計は私物
問い合わせ先/ロロ・ピアーナ銀座並木通り本店
TEL:03-3572-0303
https://jp.loropiana.com