ISSEY MIYAKEのウオッチ・プロジェクトの最新作は、プロダクトデザイナーの岩崎一郎がデザインを担当。シンプルでピュアなフェイスに、新機軸が隠れています。
ISSEY MIYAKEのウオッチ・プロジェクトは、今回が17作目。そのプロデュースの力は常に時計デザインの領域を刺激し、時代を進めてきました。その最新作が「f エフ」。ノミネートを受けたデザイナー岩崎一郎は、前作「C シー」に続きプロジェクト2回目の参加です。
シンプルなラウンド形3針に分・秒目盛、24時間制のアラビア数字アワーマーカーとブランドロゴ。切り詰めた要素のミニマルなデザインが、ピュアな美しさを見せます。しかも、2色ある文字盤に、従来の先入観では考えられない仕掛けを施しました。
黒ダイヤルの最外周、メインのアワーマーカーは13時、14時を経由し、24時に天のポジションに戻ります。つまり”午後の時計”であり、白ダイヤルのバージョンとは、表と裏を構成しているのです。
アラビア数字を2重に巻いた24時間制の表示は、ミリタリーウオッチをはじめとして決して珍しくはないでしょう。しかしその位相を逆転することで、午前の時計と午後の時計を分けられることを、我々は見落としていました。
一般的な腕時計では正午を時計の真上方向に仰ぎ、地平からの太陽が高く昇るまでを時針の最初の1回転に定めます。一方「f エフ」の黒い文字盤は、太陽が降りてゆき、沈んで地球の真裏に位置するまでのほうにむしろ優先順位を置きます。人にはそれぞれの”1日”という時間経過があり、「f エフ」はそこに白と黒、真反対の明度をもつ無彩色で「AMフェイス」と「PMフェイス」を描き分け、時の選択肢を提示しました。どちらのフェイスも同色で同心円の、控えめで手の込んだ仕上げが施されています。
夜空にきらめくふたご座の恒星、カストルとポルックス(ギリシャ神話で兄弟星と伝えられる)は、金色と銀色に見えますが、どちらも輝いている。ひとつひとつが完全であるものが、2つで対を成しています。今回、岩崎がデザインした「f エフ」も黒ダイヤル、白ダイヤルのそれぞれが魅力的な腕時計です。ともにカーフとナイロンのストラップが用意されており、両方を入手したくなるモデルです。
岩崎一郎 ICHIRO IWASAKI
プロダクトデザイナー
●1965年生まれ。ソニーデザインセンター勤務の後イタリアへ渡り、ミラノのデザイン事務所を経て帰国。95年にイワサキデザインスタジオ設立。家具・照明器具などインテリアからデジカメや携帯電話など、広い分野のデザインを手がける。
問い合わせ/セイコーウオッチ お客様相談室 TEL:0120-181-671