キリンビールのマスターブレンダーを務める田中城太氏が、「アイコンズ・オブ・ウイスキー 2017」にて世界最優秀賞を受賞。「富士山麓 樽熟原酒50°」に代表される富士御殿場蒸溜所の真摯なウイスキーづくりは、世界にジャパニーズウイスキーの存在感を深々と刻みつけました。

スコッチ、アイリッシュ、バーボン、カナディアン、そしてジャパニーズ。日本のウイスキーはいまや世界5大ウイスキーのひとつに数えられ、その注目度は飛躍的に高まっています。そんな状況の中でもたらされた、キリンビールのマスターブレンダー田中城太氏の「アイコンズ・オブ・ウイスキー 2017」における “マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー” 受賞のニュース。その歴史的瞬間を、ロンドンで行われた授賞式の様子とともにレポートします。
信じる道をひたむきに歩み、掴み取った世界最優秀の称号。

『ウイスキーマガジン』の発行元パラグラフ・パブリッシング社が主催する、年に一度の世界的コンテスト「アイコンズ・オブ・ウイスキー(以下IOW)」と「ワールド・ウイスキー・アワード(以下WWA)」。今年の授賞式はロンドンの中心地にあるザ・ウォルドーフ・ヒルトン・ロンドンにて3月30日に行われました。荘厳な雰囲気の会場に各国から報道陣やウイスキー業界関係者が集い、和やかな雰囲気の中で授賞式は始まりました。

まずはウイスキー業界に著しい貢献を果たしたメーカー、蒸溜所、人物などを表彰するIOWの授賞式から始まり、その後、ウイスキー商品を表彰するWWAの授賞式へと進みました。各賞の受賞者が読み上げられるごとに会場内には大きな歓声が上がり、同業者同士が受賞の喜びを分かち合う場面も見られます。余興ではフラッシュモブ風のミュージカルも披露され、会場の熱気はどんどん高まっていきました。

そして授賞項目のなかで “マスターディスティラー/マスターブレンダー・オブ・ザ・イヤー” の栄冠が、キリンビールのマスターブレンダー田中城太氏に贈られました。ビール、ワイン、バーボンと、異なる酒づくりの現場で培った知識と経験を活かした、イノベイティブなウイスキーづくりが世界的に評価された瞬間です。世界最優秀のブレンダーとしての栄冠を獲得した田中氏に、参加者一同は惜しみない拍手を贈りました。

2年前に小誌が富士御殿場蒸溜所を取材した折には、グレーンウイスキーに対するひとかたならぬ熱い想いを語った田中氏。今回は個人としての受賞に加え、自身が手がけたシングルグレーンウイスキーには、昨年に引き続き世界最高賞の栄冠が与えられました。根強いシングルモルト礼賛の世の中にあって、自身の信じる道をひたむきに歩み、掴み取った世界的な評価。未来への目標にかける想いの強さが常に試される、ウイスキーづくりの本質と醍醐味が垣間見えました。

世界に情報を発信することも、ブレンダーの大事な役割のひとつ。

IOWとWWA授賞式の翌日から2日間、ロンドン東部のイベント会場では世界各国から蒸溜所が出展するウイスキーの一大イベント「ウイスキーライブ」が開催されました。その会場で行われる試飲セミナーに登壇する予定の田中氏は、各ブースを廻って馴染みの蒸溜所仲間と情報交換をしていました。IOW受賞のニュースが世界に配信された直後とあって、田中氏の登場に歓声が上がるなど、会場内は盛り上がりをみせました。

試飲セミナーには、着席スペースいっぱいにウイスキー愛好家が集いました。富士御殿場蒸溜所で行う3種類の蒸留方式による3つのタイプのグレーンウイスキーづくりと、それをブレンドすることによって生まれるうまみの相乗効果を説明する際には、 “Three UMAMI Brothers(うまみの三兄弟)” というキャッチーなフレーズを織り交ぜて来場者の笑いを誘いました。セミナーが終わるとすぐに、参加者は田中氏を取り囲むように質問を投げかけていました。

IOW受賞の翌日、ウイスキーに関する著書を多数執筆してきた業界の権威、ウイスキージャーナリストのデイブ・ブルーム氏も祝福に駆けつけました。「スコッチをベースにカナディアンやアメリカンの要素も取り入れるスタイルは、世界的に見ても富士御殿場蒸溜所だけ」とデイブ氏。続けて「人々がグレーンの面白さに気づいたのはつい最近のこと。世界がようやく城太の才能を認識できるようになったんだと思います」と田中氏の受賞をともに喜びました。

デイブ氏が「キリンはまさに隠れた巨人だった」と語るのは、これまで一途に理想のウイスキーづくりを追求するあまり、その成果を海外に向けて積極的に発信することのなかった富士御殿場蒸溜所を象徴する言葉。モルトウイスキーに対するこだわりはもちろんのこと、いままで脇役とされてきたグレーンウイスキーにも同等、ときにはそれ以上の情熱を注いできた富士御殿場蒸溜所の今後に、いま世界中の熱い視線が注がれています。
世界最優秀の称号を得たブレンダーの、これからのこと。

富士御殿場蒸溜所では、伝統的なポットスチルを用いて蒸留するモルトウイスキーに加え、機能の違う複数の蒸留器を駆使して、香味別に3つのタイプのグレーン原酒をつくり分けています。ライトタイプ用はマルチカラム(多塔連続式蒸留器)、ミディアムタイプ用はケトル(単式蒸留器)、バーボンスタイル用はビアカラム&ダブラー(連続式蒸留器)という3種類の蒸留方式を採用しています。これらの3つの個性の異なる原酒の組み合わせにより、グレーンウイスキーらしいすっきりとした穏やかな味わい以外に、芳醇で豊かな香味や、華やかさ、重厚さをも加え、富士御殿場蒸溜所ならではの、奥ゆかしく華やかで馥郁(ふくいく)とした味わいを表現することが可能になりました。

田中氏の試飲セミナーで提供されたのは、4月27日(木)に発売が予定される新商品の「キリンウイスキー 富士山麓 Signature Blend」。熟成のピークを迎えた原酒を厳選し、富士御殿場蒸溜所のウイスキーづくりの真髄を表現した田中氏の自信作です。この商品では従来の白いラベルではなく、新たにダークブラウンの高級感漂うデザインを採用。重厚感のある富士山の姿が、円熟味のある琥珀色の液体を堂々と飾ります。

今回、田中氏を取材するなかで、繰り返し強調された言葉が“先達のおかげ”。先達が過去にまいてきた途方もない数の努力の種が実り、日本のウイスキーはいま世界的な評価を獲得しています。これと同じく後進のために良質な種をまき続けることが、現代を預かるブレンダーの大事な役割のひとつ。「この受賞はひとつのマイルストーンであり、本当に重要なのはこれから何をするかということです」と、田中氏は未来を見つめています。
「キリンウイスキー 富士山麓 樽熟原酒50°」 オープン価格
「キリンウイスキー 富士山麓 Signature Blend」 オープン価格
問い合わせ先/キリンビールお客様相談室 TEL:0120-111-560
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