最新と定番、どちらを選ぶ? Vol.02:ワークウェアのごとく体と気持ちに馴染むフレンチシューズ「パラブーツ」。何足もほしくなるこの魔性のシューズを、たっぷりと17足ご紹介します。

カメラにせよ文具にせよ、銘品と呼ばれるものはきまって使い勝手もいいものです。「見た目に惹かれて購入したのに、手放せない愛用品になった」、という経験のある人は多いでしょう。フランスで昔ながらの製造方法でつくられている「パラブーツ(paraboot)」も、そんな銘品を何足も送り出しているブランド。ふと他人の足元を見ると、くたくたに履き込まれたパラブーツだった、というのはよくあること。それほどに日常に馴染み、ついリピート購入してしまうこのブランドの真価はどこにあるのでしょうか? 第二回目となる「最新と定番、どちらを選ぶ?」では、2017年春夏に購入できるパラブーツを徹底リサーチ。セレクトショップ別注から、永遠のスタンダードまで注目の17足をお届けします。
CONTENTS
1. 旬の感性でアップデートされた、セレクトショップ別注。
2. 通常コレクションの気になる新色を5足厳選。
3. やっぱり “黒” は外せない、定番6モデルのラインアップ
4. 人気に火が付いた'80年代〜現在の近代史。
●問い合わせ先
ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館 TEL:03-3479-8180
旬の感性でアップデートされた、セレクトショップ別注。




パラブーツに旬の感性を加え、ファッションシーンでの人気を下支えしているのが、セレクトショップの別注モデルです。パラブーツはシーズン毎に新モデルに入れ替えるブランドではなく、「ミカエル」や「シャンボード」のように通常コレクションでも(直営店販売品でも)必ず展開されている型もあれば、ショップ限定で過去のアーカイブを蘇らせる型もあります。今季2017年春夏に別注オーダーした国内のショップは、「ユナイテッドアローズ」、「ディストリクト ユナイテッドアローズ」、「ビームス」の3者。どれもひとクセあるハイセンスなラインアップです。ユナイテッドアローズは大人顔のミリタリーテイスト、ディストリクトはクールでスタイリッシュ、ビームスはスポーティなリラックスと、それぞれ個性が異なります。履く人を選ばずレンジが広いパラブーツの特性がよく表れています。
●問い合わせ先
ユナイテッドアローズ 原宿本店 メンズ館 TEL:03-3479-8180
ディストリクト ユナイテッドアローズ TEL:03-5464-2715
ビームス 原宿 TEL:03-3470-3947
通常コレクションの気になる新色を5足厳選。




直営店やセレクトショップで販売されている通常コレクションの中から、流行のファッションスタイルと相性がいい明るい色目の新色をピックアップしました。普段はスニーカーを愛用している人も、足元をチェンジしやすいモデルです。素足履きを楽しめる軽快なデッキタイプのシューズは、パラブーツの春夏シーズンのアイコニックな存在。掲載の3足はどれも異なる型で、紐締めでフィット感を調整できる外羽根式のものから、ローファーのベルトがついたスリッポンまで、様々なバリエーションがあります。製造方法はどれもブレイク(マッケイ)製法。足に馴染まないと靴ずれを起こし素肌を痛めがちですから、しっかりと試し履きして購入しましょう。
お馴染みの「シャンボード」は、パラブーツの全モデルの中で一番人気を誇ります。丸っこく親しみやすいシルエットで、長年履き続けて形が崩れていくほどに、ワークシューズらしいムードが増していきます。カジュアルな服装のときはもちろん、ドレスダウン用として履く人も多い万能シューズです。ただしこれも実は、足に合う人とそうでない人がいます。個性的な木型の特性によるものなのですが、その解説は次ページにて。
●問い合わせ先
パラブーツ青山店 TEL:03-5766-6688
やっぱり “黒” は外せない、定番6モデルのラインアップ





色彩豊かなパラブーツの中で、もっとも売れているのは黒の定番モデルです。モノによってはビジネスシーンでも通用する汎用性の高さから、「最初の一足は黒」という人が多いようです。パラブーツの商品展開の中にはドレスシューズも存在しますが、広く支持されているのは伝統のノルウィージャン・ウェルト製法(パラブーツは、ノルヴェイジャン・ウェルト製法と呼ぶ)のシリーズ。古くは登山靴に用いられた製法であり、アッパーとアウトソールの間に縫い付けられた、シューズの周囲をぐるりと覆う細革の「ストームウェルト」により、雨が染み込みにくい全天候型シューズになっています。さらに特筆すべきは、自社生産しているラテックスのゴム底。内部がハニカム構造で、履き心地がエアクッションのように快適です。道路のアスファルトへの耐摩耗性能も驚異的で、すり減りにくさは業界トップレベルでしょう。
ただしパラブーツの造りは基本的に、アウトドア用途のワークシューズに根ざしています。ヒールカップは大きめで、分厚いソックスも履けるように考えられています。踵が小さい人は、アッパーのホールド性とヒールカップの安定性とのバランスに違和感が生じるケースもあるでしょう。その場合、同じUチップでも「シャンボード」でなく「アヴィニョン」を選べば足首が固定され、歩きやすさが向上することもあります。購入前は必ず足を入れてフィット感を確かめましょう。せっかくの上質なシューズですから、最良の履き心地の一足を手に入れたいものです。
●問い合わせ先
コムデギャルソン TEL:03-3486-7611
パラブーツ青山店 TEL:03-5766-6688
人気に火が付いた'80年代〜現在の近代史。





国内代理店の「アール・ピー・ジェー」によれば、「本当に人気が出たと実感したのはここ5年ほど」、と言います。セレクトショップの別注モデルが評判になり、ショップスタッフがこぞって履いたことがきっかけでした。自転車通勤者なども増え、オンオフ兼用で履けるシューズが注目されたことも人気に拍車を掛けました。こうした中でシンボルとなったのが、Uチップの「シャンボード」です。
それ以前も、1908年創業の「リシャール・ポンヴェール社」が手掛けるパラブーツは、お洒落に履ける高級な実用シューズとして高い評価を得てきました。長い間代表的なモデルだったのは、ヨーロッパの山岳地帯のチロル地方で履かれた民族シューズをルーツに持つ、チロリアンシューズ「ミカエル」。1945年に初登場した記録のある歴史的な一足です。日本に本格的に輸入されるようになったのは'80年代。当時のチロリアン流行を受けて、ミカエルの原型となった「モジーン」がヒットしました。'80年代後期には、いまや伝説的ともいえる「エルメス」の別注ミカエルが登場。アッパーにアザラシの毛皮を用いた斬新なデザインがファッション界で大評判になり、その後は通常商品としても展開され、パラブーツのクオリティの高さを一躍世に広めることになりました。同時期に、「イッセイミヤケ」や「ヨウジヤマモト」もコラボモデルをリリースし、パラブーツとモード界との結びつきがさらに深いものに。
根強いファンを持つブランドになったパラブーツが不遇の時代を迎えたのは、ロングノーズの紳士靴がブームになった2000年代です。丸く無骨なフォルムは、当時流行したスリムなパンツや着丈の短いテーラードなどと合わせにくく、メインストリームの波に乗れませんでした。この時期を乗り越えた現在は、ファッション雑誌の人気ランキングで次々に一位を取るほどの快進撃を続けています。
今年2017年にはフランス本国において、車で15分ほどの距離に分かれていた二つの工場が移転して一つになり、一箇所に製造ラインがまとまります。効率のいい体制になり、生産性が向上することでしょう。我が国では、4月20日(木)に誕生する話題の商業施設「ギンザ シックス」の中に、国内3店舗目となる直営店がオープン。次の時代につながる発信基地になりそうな予感です。(高橋一史)
資料画像提供:アール・ピー・ジェー