進化に挑む孤高のセダン、ポルシェ パナメーラ

  • 文:青木雄介
  • 写真:薄井一議
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ポルシェから「新型パナメーラ」が登場。911が嫉妬するほどハイクオリティな機能とデザインは、まるで4ドアスポーツカー。常に最上を貫くポルシェという企業の姿勢からパナメーラの全貌をひも解きます。

新しいパナメーラの全貌は今年の6月に、ベルリンで公開されました。開発を担当したゲルノット・デルナー博士がメディアに伝えたのは、「前のモデルから引き継いだのはたった3点。コンセプトと車名、そしてエンブレム(ポルシェクレスト)だけです」

それ以外の車体、エンジン、トランスミッションは新しいテクノロジーとともに、すべて刷新。そしてヴェールを脱いだ新しいパナメーラに、世界中から称賛の嵐が巻き起こったのです。その姿はまぎれもない“ポルシェそのもの”だったから。「4ドアスポーツ」ともいえる新しいパナメーラ、徹底されたその世界観をご紹介しましょう。

大幅に進化した機能に、ポルシェの“姿勢”が見えてくる。

初導入となる4灯式デイタイムランニングライト、その輝きに魅せられる。

レーシングカーのような輝きを放つパナメーラのLEDヘッドライト。日本初導入となる4灯式のデイタイムランニングライトは日中の被視認性を飛躍的に高めます。また、オプションのLEDマトリックス ヘッドライトは、84もの輝点がドライビングコースの歩行者や障害物を的確に照らすなど、夜間運転の安全性を変える、ポルシェ最新のテクノロジーといえるでしょう。

誰もが目を奪われる、アイデンティティの主張。

“フライライン”と形容される、リアに向かって美しく傾斜するルーフラインはポルシェそのもの。全体をより低く見せつつ、リアオーバーハングを長くとることで量感のある力強い印象を与え、かつクーペボディに連動感を生み出しています。ポルシェの顔ともいえ、パナメーラは純粋なスポーツカーであることを主張します。

大胆に象徴する、4ドアスポーツ変革の意志。

サイドのエアアウトレットと大胆なプレスラインの入り方も特徴的。フロントフェンダー後方のエアアウトレットは縦型に変更され、そこからリアへと延伸していくプレスラインは、3本の矢の軌道のように力強く見えます。全体的に流麗な印象に鋭利なダイナミズムが加えられることで、新型パナメーラの際立ったスポーツ性能を物語っています。

美しいインテリアは、ゲストをも満足させる最高のつくり。

新世代のコックピットは、直観的にコントロール

ポルシェ伝統の中央のレブカウンターはそのままに、コックピットの情報は新世代の幕開けを告げるべく一新されました。両サイドに配置された7インチの高精細ディスプレイにはナビのマップや、暗視カメラの映像、Gフォース、タイヤ圧を表示。また従来のハードキーを大幅に縮小し、タッチパネルの操作に集約しています。

ゲストを満足させるファーストクラスの装いで、かつてない体験を。

革素材にアルミニウム、カーボンが組み合わされた上質で美しいインテリア。特筆すべきは、アイデンティティのひとつといえる、リアシートの居住性の高さ。身体にフィットするレザーシートに、開放感と余裕のあるスペースはさながらファーストクラスの居心地です。航空機と違うのは、低音のエンジンサウンドが鼓動となって響き渡る点にあります。

ゲストが自ら調整可能、後部座席の”快適”を操る。

オンライン機能によるインフォシステムや席ごとのパーソナル設定も充実。オプションでは後部座席で個別にエアコンやマッサージチェアの操作も可能な専用のコントロールパネルも用意します。パノラミック ルーフ システム、アンビエントライト、およびブルメスター®ハイエンド 3D サラウンド サウンドシステムなど至高のセダン空間を演出します。


圧倒的な変化を、「走り」と「デザイン」で見る。

長年ポルシェを愛用してきた近藤正一さん。クルマとの一体感を感じられるところにポルシェのよさがある、と語ります。

一から設計し直されたパナメーラ。「911」も嫉妬するほどの実力はいかなるものか。ポルシェオーナーで写真家の近藤正一さんは「走り」、そして建築家の吉村靖孝さんは「デザイン」を、“それぞれの視点”で語ってもらいました。


近藤さんは、多くのポルシェを乗り継ぎ、現在は911 GT3に911 カレラ、ボクスター スパイダーを所有しています。なぜポルシェを選んできたのか尋ねると、「ポルシェはまずブレーキがいい。それと911なら、前のモデルでも最新の991型でも同じ感覚で運転できるんですよ。僕にとってはいちばん安心して飛ばせるスポーツカーですね」

4ドアのパナメーラには興味がなかったと話す近藤さん。けれども実際に乗ってみると、ポルシェとしか言いようのない硬派なスポーツ性能と、セダンらしい高級感が同居していて「本当に欲しくなった」と言います。「パナメーラは4ドアのスポーツカーとして、ポルシェのベストな答えなんですね。911から乗り換えても、まったく違和感がないのに驚きました。ポルシェがすごいところはそこなんですよ。一貫している」

つまり車種や大きさ、エンジン形式と搭載位置の違いはあっても“ポルシェらしさ”を失わないということ。だからこそ歴代の911やスポーツクーペを乗り継いできた近藤さんにとっても、新しいパナメーラのポテンシャルの高さは想像がついたといいます。「新しいパナメーラの目指すところは〝4人乗れる911”ですね。デザインもよくなっているし、後ろから見たら911にしか見えない。このパナメーラなら奥さんも横に乗ってくれるかな(笑)」


近藤正一
●1950年生まれ。デザイン学校でグラフィックを学び、1977年に写真の道に入る。1982年に近藤スタジオを設立。化粧品、時計、アクセサリーを中心に、アドバタイジングとエディトリアルで活躍する。愛車はポルシェ 911 GT3、ボクスター スパイダー、911 カレラ、ほかにはモーガン・プラス8、スバル360、ホンダS660など。レースに、日常の足に、ポルシェを乗りこなす毎日を送っている。

美しいデザインをじっくり眺める吉村さん。撮影後には「とてもいいクルマだとよくわかりました。欲しいですね」と話してくれました。

建築家の吉村靖孝さんは、新型パナメーラのディテールを眺めながら目を細めます。「新しく見えるんだけど、どう見てもポルシェ。それはなぜなんだろう、と。そもそもドイツってバウハウスの国で機能と形態を一致させるのに美学を見出すんです。泳ぐという機能に特化した魚と、走る機能を追求したパナメーラはどこか似ていると思います」。でも、それだけではないと続けます。「車内のインテリアって建築にかなり近い考え方で、機能に対していかにデザインで答えていくかが大事なんです。たとえばパナメーラの後部座席には、包まれる感覚の一方、まるで自分が運転しているようなワクワク感がある」

吉村さんはそれを「考え抜かれた映画のような体験」とたとえます。「ある構造学者は『美は合理性の近傍にある』と言ってます。パナメーラも研ぎ澄まされた魚のような機能美をもっていますが、その合理性とも違う点にもうひとつの美がある。そこはバウハウスが気づいてながら、隠していたところじゃないかと思うんですよね」

機能性だけではない“隠されていたバウハウスの美の秘密”がパナメーラに通じると吉村さんは推測します。「パナメーラは機能性というプロトコル(規則)に従順なようでいて、実際は乗っている人のビヘイヴィア(行動)をも豊かにする。そんな秘密が隠されていますね」


吉村靖孝
●1972年生まれ。明治大学特任教授。建築家としてダイナミックに変容するプロトコル(市場、法、規範)をデザインの契機と捉え、次世代の建築や都市を多く設計、提案している。代表作にコンテナの規格を活用する建築物「エクスコンテナ」など。主な著書に『ビヘイヴィアとプロトコル』(LIXIL出版、2012年)


ポルシェ パナメーラ ターボ
●エンジン形式:4.0ℓ V型8気筒ツインターボ ●最高出力:550PS/5,750‐6,000rpm ●最大トルク:770N・m/1,960-4,500rpm ●トランスミッション:8速PDK ●車両本体価格:¥23,270,000

問い合わせ先/ポルシェ カスタマーケアセンター TEL:0120-846-911
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