リニューアルした「イデーショップ 自由が丘店」、ここをお見逃しなく!

  • 写真:平岩 享
  • 文:小川 彩

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創業30年が経過したいまもインテリア界を牽引するイデーが「イデーショップ 自由が丘店」をリニューアル。注目すべきポイントや新たな取り組みを探りに行きました。

思わず手に取りたくなる、そんなスタイリングが光る1階の企画展示。

東京・自由が丘の「イデーショップ 自由が丘店」がこの9月にリニューアルオープンしました。インテリアの豊かさを30年以上追求してきたイデーの新しくなった旗艦店からは、ものを選ぶ喜びと同時に、アート、工芸品、作家の作品などを編集して見せることで、驚きや発見を提供したいというメッセージを感じます。今回ナビゲートいただいたのは、イデー・バイヤー、大島忠智さん。注目のブランドやアイテムと、新たな取り組みを紹介してもらいました。

スタイリングと月毎に開催される企画展をチェック

大島忠智さん。バイヤーとして国内外のつくり手やデザイナーを訪ねる機会が増えているそう。

さっそく大島さんに、リニューアルのポイントを伺いました。「もともとイデーは、質のよさとともに、遊び心や生活のアクセントとなるデザインを大切にしてきました。ところがブランドが育つにしたがって、店舗数も増えて規模もさまざまになり、個性の強いアイテムやメッセージ性のあるものを伝えづらくなったことも事実です。そのため原点に立ち戻って、いまの時代らしい表現や編集方法を考えました」。そう話してくれた大島さんに、リニューアルのメッセージが込められた1階から案内していただきました。

イデーのメッセージを伝える、ファサードに面したスタイリングスペース
昨年の日本民藝館賞を受賞した山崎大造さんの作品など、小林和人さんの審美眼、見応えがありました。

インテリアグッズ、テーブルウェア、グリーンなどが中心の1階は、時代や作家性を超えた製品のセレクトと見応えのあるスタイリングに注目しましょう。オープニングで目を引いたディスプレイのひとつが、エントランスのスタイリングスペース。
ちょっと近未来的なフォルムのラウンジチェアは、1988年にマーク・ニューソンがデザインし、いまもイデーで生産され続けている「エンブリオ チェア」です。当時無名だったマーク・ニューソンが抜擢、起用されたプロダクトには、新しい才能を発掘する創業時のスピリットが宿ります。

このチェアに、鹿児島・しょうぶ学園のアーティスト・濱田幹雄さんによる作品を壁や床に描き、バナキュラーなオブジェを合わせたスタイリングにいまの空気を感じます。新しい才能や名作と、工芸やアートを編集して見せる、メッセージ性のあるスペースといえるでしょう。

そして、エントランスを抜けると、遊び心のあるクラフトをさまざまな切り口で紹介する「イデークラフツ」のオープニング企画として「イデーと小林和人が選ぶクラフト展」が開催されていました。東京・吉祥寺にある「Roundabout/OUTBOUND」の店主・小林和人さんとイデーが、国内外の工芸家や作家の個性的なアイテムと、普遍的なプロダクトをスタイリングした展示からは、「もの」によって日常を創造する楽しさが伝わってきました。

大島さんが惚れ込んだフランスのヴィンテージ什器に並ぶ「マド エ レン」の製品。
上はアカシアの樹脂、下は火山石。自然の造形美を感じる素材は、眺めていて飽きません。「別の器に入れて室内に置いても雰囲気がありますよ」と大島さんはディスプレイのアドバイスもしてくれました。

「リニューアル後、おひとりで立ち寄ってくださる男性のお客様が増えました」という大島さん。実際1階にはPen読者の心をくすぐるような、一点もののアンティークや雑貨、少し贅沢だけど生活を豊かにする質感の高いものが目を引きます。そんなアイテムのひとつが、南フランスのサン・ジュリアンで製造されているルームフレグランス「マド エ レン」です。鉱物や樹脂などに、植物から蒸留抽出した香りをしみ込ませ、モロッコの職人がつくる鉄のラウンドボックスに閉じ込めました。ソリッドなテイストとエレガントな香りに、緻密な物語ごと持ち帰りたくなる逸品です。

アップサイクルを通じたエシカルなものづくりの取り組み、POOLシリーズ

新しい取り組み、プールのアパレルブランド「いろいろの服」。色のバリエーションが豊富。
循環させるコンセプトをデザインしたプールのロゴ

続いて大島さんはファッションアイテムが並ぶコーナーを案内してくれました。「もうひとつ、1階で紹介したいのが、グループ会社である無印良品からの提案で生まれた“プール”という取り組みです。無印良品では何千種類ものプロダクトが、非常に厳しい製品検査を経て売り場に並ぶのですが、規格に外れた製品は廃棄されています。大量の廃棄物の中にはまだ使えるものがあるのでは、という声が上がり、お皿のB品やファブリックの残反などに手を加えて新たな価値を与える企画が生まれました。この企画監修を、ミナ・ペルホネンの皆川明さんに依頼したのです」。その後イデーでの販売が決まり、アパレル、ハンカチ、そしてテーブルウェアのブランドが誕生していきます。

プールは「ためて(=POOL)つなげる(循環=LOOP)ものづくり」というコンセプトからネーミングされました。手が届かないようなアート作品ではなく日常生活に取り入れやすくなるような製品を目指して、皆川さん、無印良品とイデーのチームで仕組みを設計しています。

アパレルブランド「いろいろの服」は、ファブリックの残反を使い、ワンピース、アトリエコートやブラウスなどの日常着が中心です。製品染めしたコットンやリネンの手触りがやわらかく、着心地の優しい製品です。すべてワンサイズで男女共有できるのも魅力です。取材当日大島さんが着用していたインディゴブルーのアトリエコートも実はこのシリーズ。「“いろいろの服”というネーミングのように、もっと色のバリエーションがあったのですが、こんなに反響が大きいとは!」と大島さんやスタッフも驚くほど。現在店頭では色みが若干少なめですが、増産されるのを気長に待ちましょう。

素材感、手に取りやすい価格もあって、オープン直後から反響大。すでに品薄の色みも多数あるとか。ユニセックスで楽しめます。
シックな生地とビビッドな色の糸の配色が、男性にも女性にも喜ばれそう。

こちらは、「エブリデイハンカチーフ」。ベッドリネンの端切れからつくられました。ワンポイントの刺繍は皆川明さんの手描きスケッチを起こしたもの。小さいアイテムでも縁かがりなどディテールをしっかりつくり込んでいるのはさすがです。1週間日替わりで使えるよう全7色。揃えてプレゼントにいかがでしょう。



プリントの色合いは料理を選ばない呉須に。コラージュの配置も統一感があるので、揃えた時に調和がとれます。

食卓がほっとした時間になりそうな、器に自由に描かれた線や点。白磁器のB品にアートを転写プリントした、テーブルウェアブランド「コロコロのもの」は、鹿児島の福祉施設「しょうぶ学園」とのコラボレーションです。第1弾として同学園のアーティストである翁長ノブ子さんと濱田幹雄さんが描いた作品からドット柄を抽出してコラージュしました。「製品の価格には、しょうぶ学園に納めるアーティストフィーも含まれています。関わった人すべてに利益がシェアされることもプールの一環なのです」という大島さん。今後もアーティストや作家と協力しながら、エシカルなものづくりの取り組みを継続する予定です。

リニューアル記念として、アーティストが直接作品を染め付けした「白磁小皿」と「白磁特大」を限定数生産しました。透明感のある染め付けで描かれた筆致は躍動感があります。

新たなる定番家具が、2階にお目見え!

無垢のオークを使った普遍的なデザインの“ディモンシュ”シリーズ。リビングとダイニングのラインアップが、リニューアルで揃った。

2階は家具や照明を中心に、よりリアルなイメージをかき立てるスタイリングでいくつものシーンを展開するフロアです。リニューアルに合わせて、ベルギーのデザイナー、マリナ・ボーティエによる「ディモンシュ」シリーズの新作が発表されました。

“デザインコンシャスではなく、経年変化を楽しみながら無理せずに使える家具を”という依頼に、マリナは無垢のオーク材を使ったタイムレスなデザインで応えました。「イデーは以前からペイザンという家具のシリーズで、彼女と一緒に仕事をしてきました。
マリナはブリュッセルのアトリエで、家具のデザインだけでなく販売もしていますし、フードイベントを開催しながら、使い手の目線をもつように心がけているといいます。そういうデザインに対する姿勢に信頼を置いているんです」と大島さん。今回はすでに5月に発表したソファとローテーブルに、ダイニングテーブル、チェア、トロリーが新たに加わりました。

フェミニンなダイニングからメキシコのフォークアートを並べた個性的なシーンまで、自分好みのスタイリングを想像できる構成のフロアに。

フロア全体を見渡すと、ところどころにカラフルなペイントやウォールペーパーを施工した間仕切り壁が立っているのに気づきます。間仕切り壁や収納棚を増やすことで、スタイリングしたシーンごとにスペースが区切られて、より明確にインテリアをイメージしやすくなりました。小物の開発やセレクトで関わってきた大島さん。今後、スタッフによりシーンを随時変化させていく予定だそうです。

感じるままに、好きなアートを選べる空間。

ラウンジチェアやソファに座って、リビングにいるような気分でアートを選べるスペース。
椅子を一脚選ぶように、アートも楽しんで選んで、どんどん空間に取り入れてほしいという大島さん。

「コーディネートラボ」とネーミングされた3階には、カーテンやラグなどファブリックのサンプルが揃うコーナーのほか、さまざまなドローイングやリトグラフなどが壁一面を彩るアートギャラリーがあります。「インテリアを考える際にアートを取り入れたい、選ぶ楽しみを味わいたい。そんな人のために、インテリアショップとしてアートを提案するためにつくったスペースです」と大島さん。壁への施工方法だけでなく、家具との関係性やスケール感などを気軽に相談できるのもうれしい点です。

作品はアート担当スタッフや、海外に買い付けに出張した際に大島さんがセレクトしています。また、企画で交流しているしょうぶ学園のアーティストによる刺繍作品やドローイングも扱います。大島さんは、「アートはインテリアに左右されず、自分が“好き”と感じるセンスを大切にしてほしい。また初心者の方は、モノクロのドローイングなどがインテリアと馴染ませやすいかもしれません」とアドバイスをくれました。

企画展の準備や、ブランドのウェブマガジンの制作などに奔走する大島さん。インテリアに興味をもち始めたばかりの方へのアプローチも忘れずに、かつエッジの利いたものを発見する奥行きの深い店のあり方を今後も追求したいといいます。アートをエッセンスとしたスタイリングを通じて、生活の豊かな楽しみ方を提案していきたい。大島さんと歩いた店内からは、イデーのそんな意識が感じられました。新鮮な空気が満ちた自由が丘店で、心に響くインテリアアイテムとの出会いをじっくり楽しんでみてはいかがでしょうか。(小川 彩)

イデーショップ 自由が丘店

目黒区自由が丘2-16-29
TEL:03-5701-7555
営業時間:11時30分~20時、11時~20時(土、日、祝)
不定休
www.idee.co.jp

大島 忠智 
イデーにて買い付けや商品開発をはじめ、インタビューWEBマガジン"LIFECYCLING interview & photo"の企画運営を行う。また音楽レーベル"IDEE Records"を主宰し、CDのプロデュースからDJ、執筆、USEN放送<IDEE Records Channel I 36> の選曲・監修などを行っている。

※企画展第2弾「リトアニアダイアリー イデーウィズLTショップ」を2015年10月16日(金)から11月9日(月)まで1階「イデークラフツ」で開催中。
www.idee.co.jp/shop/news/201509/lithuania.html