モーリス・ラクロアで選ぶなら、お家芸のレトログラードか、ブルーの“ラグスポ”ウオッチか。

文:並木浩一 写真:宇田川 淳

モーリス・ラクロアの評判は、腕時計の「通」と呼ばれる人たちの間で、すこぶるよい。ブランド自らが知覚価値と呼ぶ、きわめて高いパフォーマンスと反比例するコストがマニアを唸らせるのだろう。玄人も認める腕時計が、そうでない人間にもふさわしいという、公平でアンビバレンツな魅力である。 特に高い評価を得てきたのが「マスターピースダブルレトログラードムーンフェイズ」に見られるような、レトログラード機構の巧みな使いっぷりだ。針が回転するのではなく、円運動の途中に設定した終点に到達するや否や一瞬でフライバックする、特別なメカニズム。文字盤に描く扇形の運針スペースは、レイアウトを破調するダイナミックなアク...

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