第1話 僕が銘柄を選べないのは、 優柔不断だからじゃない。ーまずは純米であるかどうかを見極めよー

好きなことを言えない空気を出していたローマ帝国に対して、それってどうなんだと本気でケンカを売った勇者ハンニバル・バルカほどではないが、僕はその時、ローマではなく渋谷の居酒屋の店員に対して、勇気を振り絞りながら静かに言葉を発した。 「この中で純……純米だと……どれですか?」 古代ローマの権力の象徴、指揮官以上しか許されないトサカが付いた兜のような髪型のアルバイトの青年は、眉をひそめてこちらを見返してくる。恐らく彼は「居酒屋で働いているのはバンドが有名になるまでの単なる通過点。だからお前の酒のこだわりなんて興味ないね……」と思っているタイプ。ローマ帝国が難攻不落の都市と呼ばれた理由のひ...

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