村上春樹の言葉をひも解く、ある翻訳家のドキュメンタリー『ドリーミング 村上春樹』

文:細谷美香

ノーベル文学賞発表の時期になると、「ハルキスト」たちのコメントともに毎年メディアに取り上げられる作家、村上春樹。2年分の受賞者が発表された今年も残念ながら受賞を逃したわけですが、彼がいま世界で最も読まれている現代の日本人作家であることに変わりはありません。世界50言語に翻訳されている事実もそのことを表しているでしょう。『ドリーミング 村上春樹』は、デンマークで村上春樹の作品を翻訳している翻訳家、メッテ・ホルムを追いかけた作品。村上春樹本人は登場しませんが、彼の孤独に共鳴する翻訳家のまなざしが、小説への理解をより深めてくれるドキュメンタリーです。 カメラが密着するのは、デビュー小説であ...

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