「自分の中のいちばん遠いところにあるものを取りにいく」──尾崎世界観が語る創作の裏側

文:今泉愛子 スタイリング:入山浩章 ヘア&メイク:谷本 慧

第164回芥川賞候補作『母影』の著者、尾崎世界観の名を最初に世に知らしめたのは音楽だ。ヴォーカルとギターを担当するロックバンド、クリープハイプは2012年にメジャーデビュー。2日間の武道館公演が即日完売するなど、順調に歩んでいた。 「小説と出合ったのは、バンドがうまくいかなくなってきた時でした。ライブをやっていてもなんとなくお客さんの空気感が以前とは違っていて。声も思うように出せなくなって、音楽からの逃げ道のように小説を書き始めました」 プロを目指すバンドマンの日々を綴るデビュー作『祐介』を書き上げた尾崎は、音楽と小説の創作の違いに気づく。 「音楽は、どこかからもらってきたものを形に...

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