2Bの鉛筆を握って探り探り紙に向かう、田中慎弥の日々。

文:今泉愛子 撮影協力:カフェ・デ・マエストロ

下関中央工業高校を卒業して以来、ずっと小説を書いてきた。デビューは32歳。芥川賞を39歳で受賞し、会見の「もらっといてやる」発言で一躍、時の人となった。田中慎弥は、孤高と形容されることが多い。デビューまで仕事に就かず、現在まで携帯端末を持たない生き方、会見でのぶっきらぼうな物言いからの連想だろうか。そんな田中が、初めて恋愛小説を書いた。主人公は、下関出身の携帯電話を持たない40代の小説家、「田中」だ。 「主人公を自分に重ねたのは、読む人がこれは作者の実体験なのかと想像することを、逆に利用しようと思ったからです」 高校生の主人公は、いつも本を読んでいる同級生の緑に惹かれている。文学を...

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