船頭の物語を描いた初長編監督作には、巨匠2人の教えがあった。

文:久保玲子 スタイリング:西村哲也 ヘア&メイク:砂原由弥(UMiTOS)

時代は明治と大正のはざま。主人公は、緑萌える山間を流れる河で「渡し」を営む船頭。河にはもうじき橋がかかる。変わりゆく風景と人々の心を見つめ、船頭は櫓をこぎ続ける――。 長編日本映画で初めてヴェネチア国際映画祭「ヴェニス・デイズ部門」に選ばれた 『ある船頭の話』 は、オダギリ ジョーの長編監督デビュー作だ。 「以前に熊本・球磨川(くまがわ)の船頭さんについての番組をテレビで見て会いに行き、2週間ぐらい生活をともにしました。カメラで追ううちに、こういう美しい文化が消えていくのはもったいないと思ったのが映画づくりの始まりです。一日に客がひとりかふたりだけでも、渡る人のために役に立てること...

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