一家を襲った突然の悲劇は、果たして「運命」によるものか。

文:今泉愛子

ナイジェリア西部の町、アクレで暮らすアグウ家では、勤勉で信心深い両親のもと、6人の子どもたちが仲良く暮らしていた。子どもたちのうち、イケンナ、ボジャ、オベンベ、それから9歳の「僕」の4人は、15歳のイケンナをリーダーとしてまとまっていた。  家族に暗い影が差し始めたのは、銀行勤めの厳格な父が1000㎞も離れた北部の街に転勤になり、離れて暮らすようになってからだ。4人は近寄ってはいけないと言われていた不吉なオミ・アラ川で釣りをするようになった。漁師になったのだ。  かつて、この川は神と信じられ、住民は仲裁と助言を仰いだ。精霊が宿る川は、とても澄んでいた。ところが、ヨーロッパからキリス...

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