世界最大の辞典の編纂を支えた、 異端の学者と哀しき殺人犯の友情。

文:サンキュータツオ (漫才師/日本語学者)

【Penが選んだ、今月の観るべき1本】 前人未踏の大辞典、『オックスフォード英語大辞典』、通称OED。1857年に編纂がスタートしたこの辞典、分冊で少しずつ出版され、完全版の完成に76年かかったという大著である。この辞典の画期的な点は、ひとつの単語の意味や文法的な記述だけではなく、どの時代にどういう用例があるかを示して、言葉の使われ方の変遷を示したところにある。文字がまだデータ化もされていなければ、検索もできない中、この大事業は79年から携わり始めたマレー博士というスコットランド生まれの変革者によって成った。さまざまな言語に精通する博士が最終的なチェックを行うものの、なんと各項目...

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