“過剰なわかりやすさ”を求めて、私たちが失ったものは?

言葉でなにかを伝える時に、わかりやすさが過剰に求められるようになっている。受け手側が理解できない、あるいは理解が難しい場合、理解力不足ではなく、説明する側を責めることが増えた。ニュース番組でもわかりやすい解説が視聴率につながるとされる。 これまで一貫して世間の「当たり前」に疑義を呈し、人の思考回路に新たな道を提示してきたライターの著者が本書で論じるのは、こうした「わかりやすさ」についてだ。「あらゆる物事はそう簡単にわかるものではない」と断じ、わかりやすさを求めることでこぼれ落ちていくものを示す。 たとえば、あるテレビ番組が取り上げていた「一家の財布は夫が握るべきか、妻が握るべきか」とい...

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