三代続く刃物店を舞台に綴られる、昭和の職人たちの仕事と思想。

「断りなく勝手に他人の道具にふれようとした者に対し、道具の持ち主はそのふれようとした手を錐で刺してもよい、と教えられたものです」という大工、岡野和義の訓戒から始まる本書は、著者である東京・三軒茶屋の「土田刃物店」三代目店主・土田昇の精緻な文章によって、鋸や鑿など、木工手工具を介して形成された人々の魂の交流が描かれている。時代は昭和から平成にかけて。「土田刃物店」初代店主の助治、二代目・一郎、三代目・昇のもとを訪れた無名の鍛冶職人や大工が登場し、その交流とともに彼らの仕事ぶりや職人としての道徳が明らかになる。 職人、刃物店、大工の三者をつくり手、売り手、使い手、と換言すれば、書店を営む売...

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