ルカ・グァダニーノの美意識で、ホラーの古典が生まれ変わった。

監督ルカ・グァダニーノが、同じイタリア人のダリオ・アルジェントによるホラーの古典『サスペリア』を観て衝撃を受けたのは、14歳の時。以来30数年を経て彼は、この作品を独自に再構築するという長年の夢を叶えた。それはオリジナルとはまったく異なる展開を見せ、特異な美意識で感覚を刺激し、皮膚の裏側に入り込むような別種の恐怖で観る者を慄かせる。 そう、変わっていないのは、ひとりのアメリカ人女性が魔女が巣食うヨーロッパのダンス学校を訪れるという設定や、人物名のみ。1977年のベルリンを舞台に選んだ監督は、ナチズムの影を引きずり赤軍テロに揺れる社会を背景に、人間の集団心理や母性や権力を巡るさまざまな伏...

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