空を人工的に作り、服で纏う。アイム メンとSHOKO NARITAの協業を紐解く特別展『光が訳すもの』が開催中!

  • 文:松本雅延
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刻一刻と表情を変える空。その移ろいを、一枚の布に映し出したら――。アイム メンの2026-27年秋冬コレクションでは、光と知覚の関係を探究するアーティストデュオ、SHOKO NARITAとの協業が実現した。作品から着想を得て生まれた衣服と、その源となったアート作品が並ぶ特別展『光が訳すもの』が、東京と大阪で開催中だ。

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アイム メン2026-27年秋冬コレクションより。SHOKO NARITA と協業したシャツとパンツ。© ISSEY MIYAKE INC.

なぜ、昼の空は青く、朝夕になると赤く染まるのか。そこには、太陽の光が大気中の窒素や酸素などの分子にぶつかり、さまざまな方向へ散らばる「レイリー散乱」という現象が大きく関係している。また、太陽光には赤や青などさまざまな色の光が含まれいて、そのなかでも青い光は赤い光より散乱されやすいという性質を持つ。

この散乱の違いと太陽の位置によって、空の色は時間帯とともに変化して見える。昼間は太陽の位置が高く、光が大気中を通る距離も比較的短い。そのため、散乱した青い光が空のあちこちから私たちの目に届き、空は青く見える。一方、朝や夕方になると、太陽の位置は低く、光が大気中を通る距離が長くなる。その間に青い光の多くが散乱され、赤やオレンジの光が私たちの目に届きやすくなることで、空は赤く染まって見えるのだ。

光や「見る」という行為を探究してきた、平澤尚子と成田雄基によるアーティストデュオSHOKO NARITA。彼らの代表作のひとつ『Sky Seeing Apparatus』は、こうしたレイリー散乱を特殊なガラスを使って人工的に発生させ、パラボラ状のミラーに空模様を映し出すという作品だ。

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「レイリー散乱」を利用し、パラボラ状のミラーに空を映し出すSHOKO NARITAによる『Sky Seeing Apparatus』(2026年)。SHOKO NARITAは、平澤尚子と成田雄基によるアーティストデュオ。光を起点に、物質と知覚の関係を探る作品制作を行っている。© ISSEY MIYAKE INC.

アイム メンの2026-27年秋冬コレクションに登場する、移ろいゆく空のようなグラデーションが施されたシャツは、このSHOKO NARITAの作品から着想を得て生まれたものだ。実際にデザインチームはSHOKO NARITAのアトリエで、この作品装置を体験。そして、SHOKO NARITAの作品が描き出す「空」を撮影し、テキスタイルへと移し、一着のシャツに仕立てた。

東京と大阪を舞台に、このコラボレーションに焦点を当てたアイム メンの特別展『光が訳すもの』が開催されている。会場にはSHOKO NARITAの作品に現れる「空」と、アイム メンの衣服になった「空」が同じスペースに並ぶ。アート作品を体感しながら、その世界がどのようにして衣服へと落とし込まれたのかを確かめられるのが興味深い。

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鑑賞者の位置や身体の動きによっても見え方が変わる『Sky Seeing Apparatus』。光や物質、身体、知覚などの要素が複雑に作用し合って生まれる現象そのものを、SHOKO NARITAは作品として提示している。

 

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円形にデザインされたシャツ。空のグラデーションを表現するため、染色やスプレーなど、さまざまな方法を試行錯誤したという。© ISSEY MIYAKE INC.

印象的なのは、円形に広がるシャツの「空」と、装置が映し出す丸い「空」が、どこか呼応しているように見えることだ。

聞けば、SHOKO NARITAの作品から受けた着想は、色彩だけでなく、こうした衣服の構造にも反映されているという。実際に、平置きすると円形に広がるシャツのフォルムは、SHOKO NARITAの作品でパラボラの中に広がる光の世界を引き継いだものだ。

さらに、グラフィックの連続性を損なわないよう、なるべく生地の裁断を控え、前後の身頃と両脇の4つの大きなパーツを基本に構成。ファスナーを背面に設けることで、正面にはグラフィックが途切れることなく広がる。一方、独特なフォルムでありながら襟を設けることで、実用的なシャツとしての佇まいも残したという。

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実際に着用するとドレープが自然に落ち、平置きとは異なる『空』の表情を見せる。© ISSEY MIYAKE INC.

両者を見比べると、見る位置や身体の動きによって、その表情が変わる点も興味深い。SHOKO NARITAの作品は、鑑賞者が立つ位置によって、パラボラ状のミラーに映る像の範囲や広がり方が変わる。IM MENのシャツのでは身体に纏うことでドレープが生まれ、同じグラフィックがまた違った表情を見せる。それぞれの「空」は見る位置によって、纏う身体によって、その姿を変えていくのである。

展覧会のタイトル『光が訳すもの』も、展示を見進めるほどにその意味が深まっていく。「光を訳す」ではなく、「光が訳す」。つまり、ここで主体となるのは人間ではなく、光だ。かたちのない光が「空」となり、シャツとしてそこにとどまる。その詩的な想像力が、この会場を巡るうちに開かれていくようだ。

何よりこの空という存在も、また、私たちにとって最も身近な風景のひとつであったはずだ。人は日々それを眺め、そこに喜びや寂しさ、驚きといったさまざまな感情を重ねてきた。SHOKO NARITAとアイム メン、それぞれの探究は、見慣れたはずの空に心が動く、その感覚をあらためて呼び起こしてくれる。

なお、東京では10月24日(土)、25日(日)、大阪では10月17日(土)、18日(日)に、SHOKO NARITAの作品『Sky Recording Apparatus』を使って、自由に「空」の色を作り、写真に収められるワークショップも開催。イッセイ ミヤケ公式サイトより予約できる。

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会場のISSEY MIYAKE GINZA | CUBE。入り口には、刻一刻と色をかえるSHOKO NARITA の作品『Sky Forming Apparatus』(2026年)も展示。© ISSEY MIYAKE INC.

アイム メン 特別展『光が訳すもの』in collaboration with SHOKO NARITA


会期:10月1日(木)〜11月9日(月)
会場:ISSEY MIYAKE GINZA | CUBE
住所:東京都中央区銀座4-4-5  ISSEY MIYAKE GINZA / 445 1F
営業時間:11時〜20時 無休
入場料:無料

会期:10月1日(木)〜11月11日(水)
会場:ISSEY MIYAKE SEMBA|CREATION SPACE
住所:大阪府大阪市中央区南船場4-11-28
営業時間:11時〜20時 無休
入場料:無料


イッセイ ミヤケ
TEL:03-5454-1705 www.isseymiyake.com