【Penが選んだ、今月の音楽】
NHK交響楽団 沖澤のどか(指揮) 『N響大河ドラマコンサート2026』
NHKで大河ドラマの放送が始まって60年以上が経つ。その歴代テーマ曲の多くを演奏してきた“本家本元”のNHK交響楽団が、明晰な演奏で新しく光を当て直したライブ盤だ。指揮を務めるのは小澤征爾の後継者との期待がかかる沖澤のどか。親しみやすい旋律を懐かしむだけの企画と決めつけては、もったいない。新録音で聴き直すとわずか数分の音楽とはいっても、細部まで緻密につくり込まれた楽曲が多いことに気づかされる。
沖澤は旧録音の雰囲気に必ずしも寄せようとはせず、目の前のスコアと新鮮な気持ちで誠実に向き合ったようだ。主旋律を存分に歌わせながら、それを支える内声やリズム、音色の層までくっきりと浮かび上がり、作曲家のこだわりが伝わってくる。とりわけ相性がいいのが「峠の群像」「独眼竜政宗」「八代将軍 吉宗」「元禄繚乱」といった池辺晋一郎作品。明快さと劇的な推進力を両立させ、電子楽器オンド・マルトノの響きを鮮やかに聴かせつつも飛び道具にはせず、管弦楽に絶妙に馴染ませた。
本盤最大の注目ポイントは、スコアが失われていた武満徹「源義経」の60年ぶりの復活である。N響からの依頼で、大河では「春日局」などの音楽を手掛けた坂田晃一が復元に取り組んだ。武満が演奏会用の作品とは異なる方法で、日本の伝統楽器を西洋のオーケストラと掛け合わせた魅力的なサウンドは何度となく再演されていくはず。
映像音楽を主とする作曲家のイメージが更新されるのもいい。小六禮次郎の「秀吉」は通常の管弦楽の編成で聴くと、演奏会の冒頭を飾る序曲としてぴったりだとよくわかる。渡辺俊幸の「利家とまつ」は管弦楽が力むことなく歌って「風と共に去りぬ」のスタイナーのような雄大さが醸し出された。オーケストラの魅力が伝わる良企画だ。
NHK交響楽団 沖澤のどか(指揮)『N響大河ドラマコンサート2026』ソニーミュージック SICL-30075 ¥3,300