【海を一望できる絶景の日帰り温泉】長崎温泉「喜道庵」で“海と空の一部”になる 小山薫堂の湯道百選 第121回湯道百選 第121回

  • 写真:杉本 圭
  • 文:小山薫堂
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〈長崎県西彼杵郡〉

長崎温泉 喜道庵

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かつて日本人は、人間も自然の一部と考えていた。近代化が進んだ明治期、「Nature」に「自然」という訳語が充てられたことで解釈は変わっていくが、それまで「自然」は「じねん」と読まれ、自分たちは自然の一部として生かされている感覚を持っていたという。温泉に入ると、不思議とその感覚が甦る。地球に温められた湯によって、人間の輪郭が少しずつほどけていくからかもしれない。

長崎の「喜道庵」は、まさにその感覚を呼び起こす日帰り温泉だ。開業は1998年。水不足に備えて井戸を掘ろうとしたところ、温泉が出た。天然丸太を用いた校倉造のログハウスも印象深い。

いちばんの魅力はロケーションである。大村湾を一望する露天風呂に浸かれば、自分が海と空の一部になる錯覚をおぼえる。水平線に沈む夕日のなんと美しいこと。その余韻とともに心も鎮まる。加えて湯の質の素晴らしさも伝えておこう。45度で湧き出すナトリウム炭酸水素塩泉は源泉掛け流し。機械を通さず加水もせず約42度に整えられる。やわらかな湯は肌を優しく包み、身も心も癒やされる。

世界有数の火山列島で、日本人は自然の一部として生かされてきた。海風によって時折運ばれてくる漁船のエンジン音が海と湯船をつなぎ、記憶の奥底をくすぐられるような気持ちになる。温泉には、人を謙虚にする効能もあるのかもしれない。

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JR長与駅からクルマで約15分。長崎市内から無料送迎バスもある。庭園は世界的な庭園デザイナーの石原和幸氏が手掛ける。併設のコワーキングスペース「Mukava Ranta(ムカバランタ)」はフィンランド語で「心地よい浜辺」の意味。
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建物や風呂場は創業当時のまま。掃除の行き届いた心地のよい空間が広がる。

長崎温泉 喜道庵

住所:長崎県西彼杵郡長与町岡郷2762-1
TEL:095-887-4126
営業時間:10時〜21時
料金:一般¥1000、子ども(5歳〜小学生)¥500
https://kidoan.com