【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『なぜあなたの感想はふつうなのか 独自の視点で語る技術』
大島育宙 著 大和書房 ¥1,650
ドラマや映画、本にしても、「それを鑑賞して終わり」にならないのがいまという時代。映画館を出た多くの人は、先ほどまで観ていた映画のタイトルで検索を始めるだろう。人によっては作品を観ている間、その感想をどのように書こうか考えているかもしれない。
作品を鑑賞してから、「感想」を読み比べるまでがワンセット。もちろんそれで新たな知見を得ることも多いけれど、果たしてそこに、その人自身の言葉はあるのだろうか?
本書はタイトルこそ挑発的だが、書かれていることは至極まっとうだ。インプットでは、とにかく意識してたくさんの作品を観て、自分なりの視座や構えをつくる。アウトプットは、観ていないと出てこない具体的な話も織り交ぜ、独自性を重視する。「面白い」を他人任せにせず、感じたことを自分の言葉で語ることが本書の目標だ。その状態に近づくための現代的な工夫が、読んでいて面白かった。
インプットに関しては、いかに効率よく、自分に合ったルーティンを設計するかに主眼が置かれていた。「あらゆるドラマの1話目だけ観る」「脚本から内容を想像してみる」「家事をしながら耳読書」等々、忙しい現代社会の中にあっても、流行りのものを点でなぞるだけではない、本格的な鑑賞へと誘うための工夫が説かれている。
感想のつくり方に関しても、テクニカルな手法が数多く紹介されているが、なかでも「個人的すぎる体験こそ武器になる」という言葉が目に留まった。独自性は既にその人の中にあり、感想が「普通」だとすれば、それは自分のことがよくわかっていないのだ。一発逆転を狙うのではなく、「私」というものを知り、その「私」を育てていく—。本書は自分自身の言葉を養うための本なのである。