ここはどこ…? 587棟もの城が立ち並ぶ「ゴーストタウン」が不気味過ぎる

  • 文:宮田華子
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写真はイメージ(ShutterStock)

トルコ北西部の山々に囲まれた谷間に、まるで「おとぎの国」から抜け出したような城が数百棟並んでいる場所がある。白い外壁に尖った塔、アーチ型の窓は童話の挿絵で見たことがある「お城」そのものだが、それが果てしなく並んでいる。

一瞬「テーマパーク?」と思うかもしれない。しかしここには楽しげな雰囲気も、人の気配もない。

この「奇妙なおとぎの国」は、トルコ・ボル県ムドゥルヌ近郊の「Burj Al Babas(ブルジュ・アル・ババス)」と呼ばれる開発地だ。外国人富裕層向けの高級住宅地として計画されたものの、工事が止まったままの状態で放置されている。現在、巨大なゴーストタウンとなり、別の意味で話題となっているのだ。

「自分だけの城」を売るリゾート

開発を手掛けたのは、トルコの不動産開発会社・サロットグループ(Sarot Group)。2011年に最初の建設許可を得て、その後732棟のシャトー型住宅を建てる計画へと拡大した。主な顧客として想定されたのはクウェート、サウジアラビア、バーレーンなど湾岸諸国の富裕層だった。価格は1戸約37万~50万ドルで、各住宅には床暖房やジャグジー、温泉水を利用したプールなどが計画されていた。

周辺は古くから温泉地として知られるムドゥルヌ。ホテルやトルコ式浴場、ショッピング施設なども整備し、夏の暑さが厳しい湾岸地域から訪れる人々のための高級リゾートにする構想だった。

一方、地元では当初から歓迎一色だったわけではない。ムドゥルヌにはオスマン時代の木造住宅などが残っており、地域の伝統的な景観とは大きく異なるシャトー群に、住民から批判の声が上がった。温泉資源の利用や環境への影響を問題視する住民もいたという。

工事は途中で止まり、城だけが残った

建設は2014年に始まったが、2016年ごろから現場の動きが鈍り始めた。販売不振や経済情勢の悪化などが重なり、なんとサロットグループは2018年に破産。732棟の計画のうち587棟まで建設が進んだところで、プロジェクトは停止した。

購入者の中には、すでに代金を支払っていた人もいる。2024年に英紙「Guardian」が取材したクウェートの購入者は、2015年にこの計画を知り、約29万ドルで1棟を購入したと語っている。英国留学中に城やカントリーハウスを訪ねるのが好きだったこともあり、「城のような別荘」という構想に魅力を感じたという。

2024年には、クウェート首長とトルコ大統領が会談し、その席でこの開発地についても話題になったと、クウェートの購入者たちは伝えられたという。ただし、会談の詳細は公表されていない。

いまも谷間に残された城の残骸

2026年現在、Burj Al Babasには居住者の姿はなく、587棟の建物はいずれも居住できる状態にはなっていない。建物の外観が形になっている一方、内部が未完成のものも多く、予定されていたホテルやショッピング施設も完成していない。

遠くから見れば、白い塔が連なる光景は確かに美しい。しかし近づけば、そこにあるのは人々が暮らす街ではなく「ゴーストタウン」だ。

現在も開発再開の可能性は残されているものの、その目途は立っていない。

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ずらりと城が立ち並ぶ風景。ミニチュアのように見えるが、リアルな建物だ。
バルコニーからの眺め。「夢の世界」に見えるものの、よく見ると朽ち始めていることが分かる。

宮田華子

ロンドン在住ジャーナリスト/iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授

アート・デザイン・建築記事を得意とし、さまざまな媒体に執筆。歴史や潮流を鑑み、見る人の心に届くデザインを探すのが喜び。近年は日本のラジオやテレビへの出演も。英国のパブと食、手仕事をこよなく愛し、あっという間に在英20年。

宮田華子

ロンドン在住ジャーナリスト/iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授

アート・デザイン・建築記事を得意とし、さまざまな媒体に執筆。歴史や潮流を鑑み、見る人の心に届くデザインを探すのが喜び。近年は日本のラジオやテレビへの出演も。英国のパブと食、手仕事をこよなく愛し、あっという間に在英20年。