ルイ・ヴィトン×シンガーが生んだ究極のポルシェ911。「旅」の美学を詰め込んだ2台の特別仕様

  • 文:小川フミオ
  • 写真:Singer Vehicle Design
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タンブールのイメージでデザインされたクロック。

ルイ・ヴィトンとシンガー・ヴィークル・デザインがコラボレーションを実施し、2026年8月13日に発表した。出来上がったのは高性能でかつラグジュアリス。希有な911だ。

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シンガーとルイ・ヴィトンのコラボでつくられた2台のスペシャル911。

フランスのルイ・ヴィトンと米ロサンゼルスのシンガーが協力してつくり上げたのが「Porsche 911 Reimagined by Singer-Classic」と「Porsche 911 Reimagined by Singer–Classic Turbo」。

どちらもコードネーム「964」と呼ばれる、1989年から94年にかけて生産された911のシャシーを使う。

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964型911をベースにシンガーがレストアし、ルイ・ヴィトンはサーフボードをはじめ米西海岸ふうの装備を盛り込んだ。

シンガーの担当は、炭素樹脂の超軽量ボディと、高性能エンジンと、カーボンセラミックブレーキなど“走り”の要素。ルイ・ヴィトンは内装を中心に仕上げを行った。

ポルシェ911のビスポーク・レストレーションで知られ、世界中の富裕層コレクターから高い支持を集めるシンガー。今回のプロジェクトの最初の一歩は、もともとの時計に替えてルイ・ヴィトンが「タンブール」型のスペシャルクロックを用意したことだ。 

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ルイ・ヴィトンのデザインチームが仕上げた内装には同社のレザーや金属加工技術が使われている。

そこから2社のプロジェクトは発展し、誰も見たことのない超スペシャルな911、というか、911リイマジンド・バイ・シンガーが出来上がった。

米ロサンゼルスに本拠をおくシンガー・ヴィークル・デザインは、964をベースに、最高のクラシック911と呼ばれる車両を手掛けている。

いまさら80年代の車両? といぶかしむ向きもあるだろうが、964はコンパクト、軽量、高剛性と、スポーツカーに重要な資質を備えている。

シンガーはそこに注目してビジネスを興したのだ。 

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930型をオマージュしリイマジンしたクラシックターボに今回、ルイ・ヴィトンのチームは独自のイメージを外装にも盛り込んだ。

シャシーが補強され、専用のサスペンションシステムやタイヤを装着。外装は空力付加物が足され、スタイルによっては電動で展開するリアスポイラーも備える。

内装もフルバケットシートなど(望めば)レースカーのような仕立てが用意される。このあたりはオーナーの好みで仕立てられる。

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ターボスタイルの内装もルイ・ヴィトンチームの仕事。

「脱着式のタンブール・クロック装備で始まったのですが、私たちの革加工技術や時計づくりのノウハウを入れた車両を作りあげようと、話が進んでいきました」

ルイ・ヴィトンウォッチ部門のディレクター、ジャン・アルノー氏は背景を説明する。 

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タンブールのブルーのダイヤルに合わせてすべての計器がリデザインされた。

ルイ・ヴィトンは従来から「Art Of Travel」というフィロソフィーを掲げ、クルマとの相性のよさを強調している。

よく知られているのが、1993年にスタートした「クラシックラン」なるイベントだ。

マレーシアのジャングルもあれば、中国も、ヨーロッパ・アルプスも、という具合。クラシックカーのオーナーを募ってスペシャルなラリーに参加してもらう。

筆者自身、2006年に「Boheme Run」に参加したことがある。現代のチェコ共和国の前身となったボヘミア王国領だった地を、クラシックカーオーナーたちが走るというものだった。

着座位置が地上2mぐらいあるクラシック・メルセデスで参加した米国人オーナーは、「高速道路を走るとセイフティベルトもないし冷や汗が出ますよ」と言っていたし、速度超過でカーブに突っ込み、焦っていたオーナーも見た。

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色合わせも徹底的で、カプスルコレクションとして手がけられたトラベルケースも車体とカラーキーされている。

そもそもルイ・ヴィトンは、ご存知のとおり、当時の上流階級に向けて高品質のトランクを手掛けたのがスタート。

船旅、鉄道旅、そして自動車の旅。旅の形態が増えるのに応じて、ルイ・ヴィトンも、製品の多様性でもって対応してきた。

シンガーによってレストアされた911でも、時計からヒントを得て、タンブールのイメージで文字盤のブルーの文字盤の速度計やエンジン回転系を仕上げ、さらに、ダッシュボードやドアの内張りも手掛けている。

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車内のブロワーコントローラーのヘッドにもルイ・ヴィトンのモノグラムの”フラワー”が用いられている。

ドアハンドルを含めた金属パーツは、ルイ・ヴィトンのバッグと同じコーティングが施され、写真で見るかぎり、美しい光沢が印象的だ。

シートを見ると、少しブラウン色とクロスステッチの刺繍が、時代がかったいい雰囲気を醸し出している。

クラシカルな雰囲気は、ルイ・ヴィトンのデザインチームの狙いだったようで、トラベル用ケースは「1924年にシトロエンのために製作されたもの」(同社)がイメージソースだそう。 

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かつてのグランドツーリングや冒険の時代へのホメージとして用意されたケースが雰囲気を出している。

その年、シトロエンは「黒い巡航」(La Croisiere Noire)なる、自動車でアフリカ大陸の縦断を敢行。北アフリカから、ほぼ南端の東に浮かぶマダガスカルまでを走破し、大きな話題を呼んだ。

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1924年から25年にかけてアフリカを走破した「La Croisiere Noire」はシトロエン車の耐久性の証明になるとともに、アフリカ大陸各地の文化を紹介する意味でも大きな話題を呼んだ。(写真:Citoroenvie)

大半がハーフトラックで、山越えなどは、自動車を部品にまで分解して人力で担いでいくという、苛酷なものだったと文献には残っている。冒険の時代とルイ・ヴィトンは足並みを揃えていたのだ。

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今回のプロジェクトのために職人が手がけたサーフボード。

「クルマの基本は機能に忠実であることですが、本来の機能を犠牲にせず、ルイ・ヴィトンのDNAにある旅を感じさせるエモーショナルな要素を採り入れています」

シンガーで、このプロジェクトのデザイナー統括を務めたオクターブ・チェイニー氏の言葉だ。

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大きく張り出したフェンダーと太くて扁平率の低いタイヤとホエールテールスポイラーがパワーを象徴しているが、いっぽうで個性的なラグジュアリー感が印象的なターボモデル。

今回の「クラシック」と「クラシックターボ」の価格は発表されていない。

往々にして911リイマジンド・バイ・シンガーの価格は100万ドルとも150万ドルとも言われるので、それを念頭にシンガーの日本グローバルパートナーと話してみてください。うらやましい買い物だ。

コーンズ・モータース
シンガー・ヴィークル・デザイン
www.cornesmotors.com/singer

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。

小川フミオ

モータージャーナリスト

自動車を中心に活躍するジャーナリスト/ライター。自動車誌やグルメ誌の編集長を務めた後、フリーランスとして活動。新車の試乗記をはじめ、グルメ、ホテル、人物インタビューなど、多岐にわたるジャンルの記事を独自の視点で執筆し、雑誌やウェブメディアを中心に寄稿している。