マイバッハブランド史上初のSLクラス参入モデルにして、最もスポーティな2シーターオープン。
メルセデスの「マイバッハ SL 680」に乗った。メルセデスの名シリーズであるオープン2シーターの「SL」を、マイバッハ流に解釈。前者は自分でステアリングを握るためのオープン2シーターであり、後者は後席に深く沈み込むためのラグジュアリー。けれどひと言でいえばどちらも「究極のクルーザー」に尽きる。
いやいや。昨今の「SL」の足まわりは固められ、だいぶスポーティになった。愉楽そのものだったかつての「SL」とは全然違う。嗚呼、あの頃のキミは、片腕をドアに載せて、潮風の海岸線を流すハンサムガイだった……。
マイバッハが仕立てた、新しい「SL」のかたち
個人的にも、メルセデスの「SL」をいつか“終のクルマ”にしたいという思いがある。ただ、願いを叶えるとしたら現代の「SL」ではなく“パゴダルーフ”の「W113」のような瀟洒なモデルと決めつけていた。そんな、マニアックだけれど確実に存在する愉楽の「SL」需要に、マイバッハが手を挙げた。「それ、ウチがつくります」ってね。それがこの「マイバッハ SL 680」。
乗ってみると、息をひそめるような静謐性とともに、薄氷を踏むような、ぱりぱりとした路面のインフォメーションがステアリングに伝わってくる。うーん、“ド”のつくマイバッハ。
ソフト化したマウント、再調整した足まわり、後輪操舵を標準装備。
東京は雨だった。マイバッハに乗るとき、なぜかいつも雨になるんだけど、それが絶好のマイバッハ日和になるのよ。濡れたアスファルトにヘッドライトが反射して、夜の街の光彩がウインドウ越しに雨粒となって輝き、スクリーンのように流れていく。
書斎のような静けさの中に、V8のハミングが低く溶けていく。ステアリングの芯にエンジンの鼓動がリンクして、大地を踏みしめるような確かさと、水面を滑るようななめらかさが同居する。よく熟成されたカスクのシングルモルトが口の中で幾重にも開くように、このクルマのスムーズさには奥行きがある。表層は音もなくほどけるようになめらかで、その底に建築的な骨格が息づく。
V8とシャシーが織りなす、究極のクルージング
モノグラムは遠慮なく、クロームは艶やかで、めまいがするほど白いインテリアも「私は特別です」と言ってはばからない。そう。このクルマの外見はバウハウス的な禁欲からほとんど反対側にいる。でもステアリングを握ると、奥にある構造的な思想に驚かされる。柔と剛を重ねることで生まれるハイエンド性は、デザインであると同時に掌で感じるエンジニアリングとして成立している。
バウハウスが「機能が美をつくる」と言えば、マイバッハは「愉楽もまた構造によってつくられる」と答える。モノグラムの奥に骨太の思想があり、絨毯の下に静かな数理が通っている。
専用エキゾーストと遮音・吸音パッケージで静粛性を高めた。
ドライブモードを「マイバッハモード」に入れると、クルマはヨットのように優雅にゆれる。そのゆれのままカーブに差しかかっても、横方向はしっかり抑えられ、雨のコーナリングでも魔法をかけられたように安定している。
虎は自分の柄を気にかけない。やりすぎに感じられるモノグラムも、生まれついた虎柄と同じことなのかもしれない。マイバッハとはアティチュードだ。雨の夜でも、オープンにしたくなる誘惑が抑えられなくなる。
メルセデス・マイバッハ SL 680 モノグラム シリーズ
全長×全幅×全高:4,695×1,915×1,365㎜
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
排気量:3,982cc
最高出力:585PS/5,500〜6,500rpm
最大トルク:800Nm/2,500〜5,000rpm
駆動方式:AWD
車両価格:¥36,500,000
メルセデスコール
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