【名車オマージュの軽EV】世界よ、東京には「スーパーワン」がある。ホンダが放つ“電撃ホットハッチ”の正体 第245回東京車日記

  • 写真&文:青木雄介
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令和版「シティ・ターボII」と称されるスタイリングに、小型EVクラス最軽量となる車両重量1,090kgを達成したスーパーワン。

東京はロンドンや香港といった世界の大都市の例にもれず、道が狭い。

東京においてクルマが小さいことは、それだけ大きな自由を得ることと同義といえる。大通りの渋滞をすり抜け、首都高を刻むように乗り降りしてどこでも好きな路地へ入っていけるし、電柱や看板、対向車を華麗にかわしながら、最短で目的に到着できる。そうね、これってまるで“メトロラリー”。

名車「シティ・ターボII」をオマージュした、新世代EV

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BOSEと共同開発した8スピーカー搭載の「BOSEプレミアムサウンドシステム」を標準装備。荷室に設置した13.1Lの大容量サブウーファーを含む8つのスピーカーにより、重低音から高音までバランスの取れた高品質なサウンドを実現する。

東京を小さいクルマ、特にホットハッチで走ることは、ゲームのように迫りくる障害をかわしまくる根源的な楽しさをもたらす。そんな「小さなブリッツ(電撃)とは俺のことよ!」って感じのホットハッチが誕生した。それが、ホンダのコンパクトEVである「スーパーワン」だ。

最高だったわ。まずホンダの名車「シティ・ターボII(通称・ブルドッグ)」をオマージュしたスタイリングがファニーでファンキーすぎる。往年のWRCグループBカーのようなブリスターフェンダーは、おそらく開発者も想像だにしなかっただろう、ヒットのツボを衝いてしまった。レトロモダンといえばいまどきっぽいけど、もっとホンダっぽい呼び方をすれば、“ニュー東京ホットハッチ”。「ロンドンにミニがあるなら、東京にはスーパーワンがある」ってね。

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確実なホールド性を実現するために「N-ONE e:」用のシートに硬質パッドを使用し、サイドサポートを強化した専用スポーツシートを採用している。

「スーパーワン」とは、オンリーワンにほかならなかった。まず走り出した途端、「缶スープのつもりで口をつけたら、冷たいかぼちゃのポタージュだった」みたいな不意打ちの上質感がある。戦慄が走るよね。それこそフレンチのアミューズみたいに、最初のひと口でクルマの実力がわかる。

その上質感の正体は、足まわりにある。ベースになっている軽EVの「N-ONE e:」に乗ったときも驚かされたのだけど、バネの減衰力と車重のバランスが、尋常じゃないくらい絶妙なのね。ほとんどのEVは重さで足まわりが硬くなるんだけど、「スーパーワン」は路面からのハーシュネスを抑えつつ、アスリートのフットワークみたいにサスペンションが伸び縮みする。そのバランスの素晴らしさに、「正直震えるね。こんなEVある?」って感じ。

軽さが際立つ、ホンダらしい走りの楽しさ

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トレッドを40㎜拡幅した専用シャシーと、タイヤサイズを185/55R15へとワイド化。その拡幅を収めるブリスターフェンダーによりロー&ワイドな印象が強調されている。

そのフットワークが、街では走りの圧倒的な気持ちよさとなって活かされる。腰高な体型を生かして、車体をふわっと傾けながら、鼻先がイン側へにゅっと入っていく。きーんと言いそうなブーストの効き方も含めて、鳥山明が描くキャラクターのような躍動感と“おかしみ”がある。「任天堂がクルマをつくったらたぶんこうなる」みたいな。いっそマリオカートでいえば、中低速がトルクフルなマリオやルイージといったベーシックタイプをイメージしてほしい。

峠に持ち込むと、「スーパーワン」はよりファンキーになる。ワイドトレッドを活かして踏ん張りながらコーナリングし、箱根の七曲りのようなタイトな上りも息切れなしに登り切る。EVだから当然なんだけど、シングルペダルでぎゅんぎゅん上るし、タイヤがそもそも小さいので切れ味も抜群なのね。

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疑似排気音は「シティ・ターボ II(1983年発売)」やDC2型「インテグラ・タイプR(1995年発売)」のエンジン音を参考にし、仮想エンジン・仮想有段シフトと同期して再生され、レブリミットやブリッピング時の音も設定されている。

下りはエモーショナルに車体を傾けながら、弾丸のように降りてくる。重力に身を任せてても、踏ん張る安心感がある。あえて仮想エンジンシフトの仮想エンジンブレーキ(回生ブレーキ)を使いつつ、ハンドリングはアンダーステアを出さないように頑張っていて、ナチュラルでクイックになりすぎない。欧州系のコンパクトはわかりやすいクイックネスを求めがちだけど、この程よい自然体を理想とする感性は、国産スポーツの尊さだね。

さらにシングルペダルで、コーナーをなぞるようなアクセルの入れ方ができるのも、トルクの出方を自在に操れるEVだからこそ味わえる楽しさ。街乗りのシティモードをシングルペダルモードにしたのも納得。これぞ新しい、東京ホットハッチ。シンプルかつ直感的な走りになるので、ぜひ都市でこそ試して欲しいモードよね。 

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フロントサスのロアアームをアルミ鍛造にして剛性を高め、リアではアームを厚くし、タイヤを支える前後のハブ剛性も強化。踏ん張りの効く足まわりになった。

「スーパーワン」に乗っていると、コンパクトスポーツのイメージが変わっていくのがわかる。静かで、乗り心地が飛びきりいいのに、キビキビ走って都市を走るためのエンタメが満載。正直、航続距離はもう100kmぐらい欲しいものの、その重さで走りや乗り心地を犠牲にするなら本末転倒、ただの普通のクルマになってしまう。

このクルマには、ホンダがこれまで軽自動車という制約に真剣に向き合ってきた歴史が結実している。このまま「スーパーワン」がEVのマイルストーンになるなら、日本はやっぱり独自のクルマ文化を持つ国として胸を張れる。大きく、重く、高価なEVだけが未来じゃない。小ささを武器に変える知恵において、日本は相当に面白い国なのだ。

 

ホンダ スーパーワン

全長×全幅×全高:3,580 × 1,575 × 1,615㎜
車両重量:1,090kg
モーター:交流同期電動機
最高出力:64PS/BOOSTモード時95PS
最大トルク:162Nm
航続距離:274km(WLTC)
駆動方式:FWD
車両価格:¥3,390,200

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