ダンスミュージックに彩られた、奇想天外なロードムービー『シラート』ほか【今月の映画3選】

  • 文:細谷美香(映画ライター)
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今月のおすすめ映画①『シラート』
ダンスミュージックに彩られた、奇想天外なロードムービー

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カンヌ国際映画祭4冠をはじめ、ゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)6冠に輝き、アカデミー賞では国際長編映画賞、音響賞にノミネートされるなど各国の映画賞で高い評価を得た。オリベル・ラシェ監督はパリで生まれ、スペインからモロッコへと移住し、本作は長編4作目となる。

砂漠の砂を震わせる重低音と、まるで終わりの見えない道。名匠、ペドロ・アルモドバルがプロデューサーとして名を連ね、数々の映画祭を賑わせてきた『シラート』が公開される。主人公は砂漠で行われたレイブパーティに出かけ、行方がわからなくなった娘を探す父親。幼い息子とともにモロッコの山岳地帯から砂漠の向こうへと車を走らせ、バンで移動する参加者たちを追いかけるようにレイブ会場を目指すことになる。

レイブのシーンが与えてくれるのは、音を浴び、包まれ、身体が侵食されて外界との境界線が曖昧になっていくような感覚だ。完璧にデザインされた音響と、サハラ砂漠で撮影された、果てしない景色と人間の対比を捉えた映像。これらがあいまって、父親が砂の上を歩く時、観る者は彼と一緒に身体ごと砂漠へと引きずり込まれてしまう。父親を演じたのは、ギレルモ・デル・トロ監督の『パンズ・ラビリンス』などで知られるセルジ・ロペス。役者たちが生み出した緊張感あふれる空気感もまた、私たちを“体感する映画”へと導いてくれる。

タイトルのシラートはアラビア語で「道」を意味する言葉であり、地獄と天国のはざまにある橋の名前でもあることが冒頭に示され、小さな犬を連れて頼りなく危うい道を歩いているかのごとき旅は、まったく予測できない方向に進んでいく。唐突に描かれるショッキングな出来事を、どう受け止めたらいいのか。テクノカルチャーの先に見えるものは、祈りか諦めか。そしてラストに広がる風景に見出すことができるのは、光か闇か——。家族の愛情を軸にした物語から出発したこの映画は、わかりやすい答えを見せてはくれないが、争いの絶えない世界の現実を映し出した作品として着地しているようにも見える。

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©2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4 PRODUCTIONS

『シラート』

監督/オリベル・ラシェ
出演/セルジ・ロペス、ブルーノ・ヌニェス・アルホナほか 
2025年 スペイン・フランス合作映画 1時間55分 6/5より新宿ピカデリーほかにて公開
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります。

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今月のおすすめ映画②『マテリアリスト 結婚の条件』
舞台はニューヨークの婚活市場、愛と現実のはざまで見えるものとは?

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ニューヨークの結婚相談所で働く、凄腕マッチメーカー(仲介人)のルーシー。彼女の前に家柄も学歴も一流のリッチな投資家と、俳優を目指して貧乏生活を送っている元彼が現れる。自身がマッチメーカーとして働いた経験をもとに監督、脚本を務めたのは『パスト ライブス/再会』のセリーヌ・ソン。マテリアリスト=物質主義者がはびこる世界の中で、選ぶべきは愛か条件か。そのはざまでゆれる主人公の心情が共感を呼ぶラブストーリー。

『マテリアリスト 結婚の条件』

監督/セリーヌ・ソン
出演/ダコタ・ジョンソン、クリス・エヴァンスほか
2025年 アメリカ映画 1時間56分
5/29よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります。

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今月のおすすめ映画③『黒牢城』
直木賞受賞の時代小説を映画化した、黒沢清監督が魅せる心理ミステリー

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© 米澤穂信/KADOKAWA ©2026映画「黒牢城」製作委員会

横暴な織田信長に反発し、籠城作戦を決行した荒木村重。密室と化した城内でひとりの少年が殺され、その後も不可解な事件が次々と起こる。村重は自らが牢獄に閉じ込めた天才軍師、黒田官兵衛に助けを求め謎に挑むが……。米澤穂信が直木賞を受賞したミステリー小説を映画化。黒沢清監督のもと日本映画を牽引する俳優たちが集結し、疑心暗鬼になった者たちの心理戦を端正な脚本と映像であぶり出す。カンヌ国際映画祭プレミア部門正式出品作。

『黒牢城』

監督/黒沢 清 
出演/本木雅弘、菅田将暉、吉高由里子ほか
2026年 日本映画 2時間27分 
6/19よりTOHOシネマズ日本橋ほかにて公開
※公開時期・劇場などが変更される可能性があります