
Shutterstock ※画像はイメージです
まだ肌寒い4月の米ボストンで、一人の男性が愛犬の命を救うために川へ飛び込んだ。カメラが捉えたその劇的な救出劇はSNSで大きな反響を呼んだが、当の男性は「人生で最も恐ろしかったし、己の無力さを知った」と、死を覚悟した当時の心境を語った。
平穏なランニングが一転、パニックに
今年4月20日、毎年恒例のボストンマラソンが行われた日のことだ。
ハンス・ナグレスさんは、2歳になるゴールデンドゥードルのベニーと一緒にランニングを楽しんでいた。ベニーはハンスさんにとって息子のような存在だという。ノーリードで走っていたベニーだが、突如として2羽のガチョウを追いかけ始めた。そして、逃げる鳥を追いかけて、そのままチャールズ川へダイブ。「ベニー、戻れ!」とハンスさんは必死に呼びかけたが、興奮したベニーには届かず、どんどん岸から離れていった。
「ベニーが溺れる姿が頭をよぎり、何も考えられませんでした」と語るナグレスさんは、服を着たまま川へ飛び込んだ。しかし、当時の水温は約4度。水に入っただけで、強烈な冷たさが彼の体を襲った。「冷たさで息がまともにできませんでした。ベニーまであと3メートルというところで、『ああ神様、腕が動かない。どうなっちゃうんだ』とパニックになりました」
それでも必死に泳ぎ続け、ハンスさんはベニーのところまでたどり着いた。ベニーを抱え上げるだけの体力は残っていなかったが、前を泳ぐベニーが沈みそうになるたび、後ろ脚を突き上げてサポートし続けた。
周囲では異変に気付いた人々が、ハンスさんとベニーの様子をハラハラしながら見守っていた。桟橋に泳ぎ着いた一人と一匹は、助けに来た人々の手で無事引き上げられた。寒さに凍える彼らのため、ボストンマラソン参加者用のブランケットも提供された。幸い、ハンスさんもベニーも無事だった。
愛犬のために冷たい川に飛び込み、九死に一生を得たハンスさん。彼の勇敢な行動を捉えた動画はSNSでも大きな反響を呼び、「勇気ある行動だ」「良い飼い主」と賞賛する声も大きい。一方で、飼い犬をノーリードで走らせていたことに対する批判のコメントもある。
懲りない愛犬
ハンスさんは、当時の自身の行動を冷静に振り返っている。「飛び込む前に浮き輪を探すとか、911に通報してもらうべきでした。本当に助けてほしいと感じた瞬間がありましたが、ボートも何もありませんでしたから」
ただ、命を救われたベニー本人は、この恐怖の体験をすでに忘れてしまったようだ。「帰り道、ベニーはまだガチョウを追いかけようとしていたんです」とハンスさんは苦笑する。
「もちろん、『それだけは絶対にダメだ』と言い聞かせましたよ」
---fadeinPager---