【読谷村で新しい旅へ】図書館を拠点に、伝統工芸と世界遺産を巡る沖縄時間

  • 文:久保寺潤子
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沖縄本島中央部に位置し、東シナ海に突き出た半島、読谷村。美しい海岸線とサトウキビ畑の続くのどかな村には近年移住者も増え、人口4万人を超えた平成26年以降は“人口が日本一多い村”として注目されている。そんな読谷村に、ローカルや観光客の新しいコミュニティスペースとして新たに生まれ変わったのが「読谷村立図書館」だ。この場所を中心に、訪れるべき3つの読谷スポットを紹介する。

 

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読谷村の中心部に誕生したゆんラボ・未来館。図書館のほかに、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のサイエンススタジオ、読谷村史編集室などがある。

街を活性化し、発信するコミュニティ空間

戦後、米軍の飛行場として接収されていた広大な土地の返還が完了したのは2006年のこと。跡地には現在、村民のための公共施設が建設中だ。なかでもパブリック・サービス・ゾーンに建設された「ゆんラボ・未来館」の中心施設となるのが読谷村立図書館。広々とした空間は、賑わい・集中・学びへの誘い・キッズの4つのエリアに分かれている。エントランス付近には読谷の工芸品、古書を販売するコーナー、スターバックス、その奥には約13万冊を誇る蔵書、読書に没頭できる半個室空間、集中した作業に適した学習室、室内遊具や工作コーナーを備えた「こどもとしょかん」が続き、さまざまなライフスタイルのニーズを満たすスペースが緩やかにつながっている。

 

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紅殻色の天井や芭蕉紙を使った照明など、温かい雰囲気の館内。

 

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キッズスペースの遊具は海中をイメージした内装。親子でゆっくり過ごせる。

「当館は慰霊の日の6月23日を除く毎日開館しています。蔵書は今後20年間かけて 24万冊まで増やす予定です。来館者は3月末で35万人。村民だけでなく、国内にお住まいの方すべてに貸出しを行っています」と説明するのは図書館の統括マネージャー、飯塚史帆だ。内装は、沖縄の屋根瓦を思わせる紅殻色の天井、芭蕉紙のランプシェード、読谷山花織の間仕切りなど沖縄らしさを随所に取り入れ、地域にまつわる講演会やワークショップも開催している。

 

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図書館の入り口に設置されたポップアップストアでは沖縄の民藝品や古書などを販売。

「地元の方はもちろん、移住者や観光客の方など、多くの方にご利用いただいています」と飯塚が話すように、朝からコーヒー片手に新聞を読んだり、ワークスペースで仕事をしたり、小さな子供を連れてくつろぐ姿が見かけられた。ランチ時には屋外の芝生スペースにフードトラックが集まり、休日にはマルシェも開催。また敷地内にあるFMよみたんのサテライトスタジオでは、毎週日曜日に生放送が行われるなど、地域のつながりを活性化するとともに、外へ向けての発信基地としての役割も果たしている。

 

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芝生広場ではナイトマーケットも開催。村内外で活躍する雑貨、飲食、古着などのショップが集まり、盛り上がりをみせた。

 

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イベントスペースでは三線のワークショップも。初心者でも参加できる。

やちむんの里を訪ねて

 

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国内外で多くの展示を行い、入選も果たしている松田共司。13連の共同登窯の前にて。

読谷村生まれの陶工・松田共司は、沖縄最大となる13連の共同登窯を開設したひとり。日々自然の声を聞きながらやちむんの制作に励んでいる。「登窯では4日間、寝ずの番をして薪を焚き続けます。1,300度の高温で焼き上げると残るのは土と鉱物だけ。灰も残りません。人類がつくったものの中で一番長持ちするのは陶器なんです」と松田は説明する。

 

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手仕事の温もりが伝わるマグカップ。自然が生み出した焼き物に、ひとつとして同じものはない。

現在は大量生産できるガス窯が主流だが、自然の素材と燃料、窯でつくるやちむんには、人間と自然が生み出す独特の風合いがある。「薪を集め、土を調合し、10年寝かせてようやく窯で焼き上げることができる。雨や風の影響もあるので、自然窯を扱うにはかなりの年季が要ります。自然の熱で焼き上げたやちむんには揺らぎや変化が生じ、それが味わいになる。電気やガスで焼いたものは形はいいけど、どこかのっぺらぼうな感じがする。僕らは形よりも中身を大事にしているんです」

 

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やちむんの里にある北窯売店では名工による皿やマカイ、マグカップなどを購入できる。

やちむんの里の奥、北窯の手前にある共同売店では、北窯の松田米司、松田共司、宮城正享、與那原正守などの作品が購入できるので、ぜひ訪れてみてほしい。また毎年2月、11月、12月には読谷各地で陶器市が開催され、ベテランから若手まで、ふだん使いにぴったりな焼き物が勢揃いする。

読谷の絶景スポットへ

手付かずの自然が残る読谷村。村の南、嘉手納町との境を流れる比謝川の潮間帯はマングローブが広がり、東シナ海に面した西側は県内随一のサンセットビューとして人気のスポット。中でも残波岬は高さ30mの断崖絶壁が続き、岩にぶつかる白波が勇壮な景勝地だ。近くには14世紀後半、中山王の命により琉球から初めて中国へ朝貢貿易を果たし、大航海時代の先駆けとなった泰期の像が佇む。大陸を望む西端の灯台の展望台から、いにしえの人々に思いを馳せたい。

 

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沖縄で一番高い白亜の残波岬灯台。昭和20年、米軍がここから上陸を開始した場所でもある。

 

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頂上の展望台からは、海岸に白波が打ち寄せるダイナミックな光景が望める。

15世紀初頭、築城家であり読谷山按司(注)であった護佐丸によって築かれた座喜味城跡は、2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」のひとつとして世界遺産に登録された。標高120cmの丘陵に立つ城跡の最も高い場所からは、読谷村のほぼ全域と遠くに海を眺めることができる。城壁はいくつもの曲線を組み合わせたようにできており、当時の築城技術の高さをうかがい知ることができるだろう。もうひとつの特徴は、中央にくさび石をはめて、ふたつの石を噛み合わせて作られた「石造アーチ門」だ。石材には琉球石灰岩が使われ、「布積」「相方積」「野面積」など、県内の城の主要な石積技術を全て見ることができる。1945年の沖縄戦中には日本軍の高射砲陣地として利用されるなど、歴史の証人としての存在を放ち続けている。

(注)按司(あんじ)・・琉球諸島および奄美群島に存在した称号および位階のひとつ。

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曲線状の城壁は、脆弱な地盤の上でも強固なものになる。周囲の松林もみごと。

豊かな自然とゆったりした時間が流れる読谷。伝統工芸や歴史的遺構を通して、縄文時代から琉球王国時代、そして現代へと時空を超えた体験ができる。読谷村立図書館では郷土に関する書籍も豊富に揃えているので、気になったトピックを図書館で調べれば、体験はより深いものになるはずだ。

読谷村立図書館

沖縄県中頭郡読谷村座喜味2901-1
開館時間:10時〜22時
休館日:6月23日(慰霊の日)
https://yomitan-lib.jp/

やちむんの里 北釜売店

沖縄県読谷村座喜味2653-1
営業時間:9時30分〜17時30分
TEL:098-958-6488

残波岬

沖縄県中頭郡読谷村宇座岬原1933
TEL:098-958-3041
参観時間: 9時30分〜16時30分(通年) 9時30分〜17時30分(3月〜9月の土、日、祝、GW、8/10〜19)
休館時間:12時〜13時

座喜味城跡

沖縄県中頭郡読谷村座喜味708-6