超貴重! パンダが大胆アプローチ。世にも珍しい、2頭による“求愛行動”を撮影成功

  • 文:宮田華子
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写真はイメージ(Shutterstock)

米ワシントンD.C.のスミソニアン国立動物園で、2026年3月下旬に撮影されたジャイアントパンダ2頭の行動が話題となっている。

オスのバオ・リーとメスのチン・バオが互いに関心を示し合い、いわゆる「パンダ流のフリート(求愛行動)」と呼ばれる一連のやり取りを繰り広げる様子が記録されたのである。映像には、仕切り越しに近づこうとする動きや、鳴き声、匂い付けといった特徴的な行動が収められており、専門家にとっても注目すべき記録となった。

2頭はいずれも2021年に中国・四川省の繁殖研究施設で生まれ、24年10月にアメリカへ到着。検疫と順応期間を経て25年1月に一般公開された。中国との共同研究・保全プログラムの一環として貸与されており、その契約期間は約10年。2034年頃までワシントンで飼育される予定となっている。

偶然ではない「撮影成功」

今回の映像は偶然撮影されたものではなく、動物園による継続的な行動観察の過程で捉えられたものである。ジャイアントパンダは環境変化や人の存在に敏感であり、わずかな刺激でも行動が変化する。そのため、自然な相互作用を記録するには長期的なモニタリングが不可欠となる。

今回確認されたフリートは単発的な接触ではなく、距離の調整や視線・音声反応など複数の要素が連続して現れた。2頭の関係性の発展段階を示す資料として価値が高い。

なぜこの映像が珍しいのか

ジャイアントパンダの繁殖は極めて限定的な条件下でのみ成立する。まず繁殖期は春(おおむね3〜5月)に集中している。春に交尾することで出産が夏の終わりとなり、子育てに適した気温や食料環境が整うためと考えられている。さらにメスの発情は年に一度のみで、持続時間はわずか48〜72時間程度と極めて短い。この限られた「時間」と「季節」が一致しなければ繁殖行動自体が成立しないため、飼育環境下でも成功率は高くない。

加えて、ジャイアントパンダは基本的に単独生活を送る動物であり、繁殖期以外に他個体と積極的に関わることはほとんどない。飼育下ではこのタイミングの一致がさらに難しく、現在は人工授精に頼るケースがほとんどだ。そのため、自然な形での関心の示し合いが観察されること自体が稀であり、今回のように相互作用が連続的に映像として記録される事例は非常に限られている。

若い2頭が見せた兆候の意味

今回の2頭の正確な誕生日は公表されていないが、ともに2021年生まれであり4歳または5歳だ。性成熟の初期段階に差しかかる時期にある。

一般にメスは4〜5歳、オスは5〜7歳ごろに繁殖可能年齢へ達するとされ、2頭とも「求愛行動」が現れやすいフェーズだ。ただし本格的な繁殖行動は個体差や環境要因に左右されるため、今回の反応が直ちに結果へ結びつくものではない。特に春という繁殖期に一致したタイミングでの観察は重要であり、季節的要因と成熟段階が重なったことで、相互作用が可視化された可能性がある。動物園側は今後も慎重な観察を継続する方針である。

今回の映像は、繁殖期にあたる26年3月下旬という限定されたタイミングで記録された点に意義がある。季節、発情のタイミング、個体成熟という複数条件が重なった瞬間の記録として、飼育下繁殖研究の基礎資料となることが期待されている。

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仕切り越しの相手を、狂おしいほどに求める様子がよく分かる。貴重な映像だ。X - @SkyNews

宮田華子

ロンドン在住ジャーナリスト/iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授

アート・デザイン・建築記事を得意とし、さまざまな媒体に執筆。歴史や潮流を鑑み、見る人の心に届くデザインを探すのが喜び。近年は日本のラジオやテレビへの出演も。英国のパブと食、手仕事をこよなく愛し、あっという間に在英20年。

宮田華子

ロンドン在住ジャーナリスト/iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授

アート・デザイン・建築記事を得意とし、さまざまな媒体に執筆。歴史や潮流を鑑み、見る人の心に届くデザインを探すのが喜び。近年は日本のラジオやテレビへの出演も。英国のパブと食、手仕事をこよなく愛し、あっという間に在英20年。