ロールス・ロイスが少量生産モデル「プロジェクト・ナイチンゲール」を、2026年4月12日に発表。超絶美しいボディを持つ2シーターだ。

戦前から、欧州にはぜいたくなオープンモデルの“伝統”がある。美しい車体を持ったオープンモデルを、コート・ダジュールを含めたリビエラ海岸などの別荘に置いておき、社交の場に乗りつける。
このところ、自動車のプレミアムブランドは、性能とスタイルと希少性を追求した、いままで以上にプレミアムなモデルを手掛けるようになっている。
今回のプロジェクト・ナイチンゲールも同様だ。さまざまな特別注文メニューを用意しているロールス・ロイスにおいて、新たに設定される「コーチビルド・コレクション」第1号だ。
ヨットのように流れる造形美

車型は2シーターオープンで、全長が5mを超える。1920年代から30年にかけて流行ったスタイルを採り入れているのも、注目すべき点だ。
とりわけ、ロールス・ロイスが1928年に送り出した「16EX」と「17EX」という試作車をイメージしたとか。

これらはトーピドーという車型で、特徴は水の抵抗を極力減らす機能美を採り入れた車体にある。陸地ではスピードの表現だったのだ。
私が見たプロジェクト・ナイチンゲールの実車は、まさに威風堂々という印象。フロントからリアにいたるまで流麗なラインが長さを強調。「コート・ダジュール・ブルー」なる専用色のボディ面が、光を反射して美しい表情を見せているのも、かなりの存在感だ。
ボディはヨットの船体から着想を得たという。24インチ径のロードホイールのデザインはヨットのスクリューを、後輪タイヤハウス背後に配されたキャラクターラインは「白波」を、それぞれ表現しているそうだ。
おなじみの星座が“瞬く”

電動ソフトトップは、カシミア、ファブリック、高性能複合素材を組み合わせたもの。
車内には、ロールス・ロイス車でおなじみの「星座」が広がる。プロジェクト・ナイチンゲールでは光ファイバーで1万500個におよぶ「星」を表現。加えて星に“瞬き”を加えたのが、プロジェクト・ナイチンゲールにおける特徴になっている。
瞬きは、ナイチンゲールのさえずりと、オープン走行で感じる風を波形化して、そこから星の瞬きのリズムを導き出したようだ。
ジャズエイジとアールデコの再解釈

すこし懐古的な趣味を取り込んだプロジェクト・ナイチンゲール。プレスリリースでは、「ジャズエイジ」とか「アールデコ」という言葉が、デザインのインスピレーションを語るときに登場する。
ジャズエイジの社会風俗を描いたフィッツジェラルドの小説「ザ・グレート・ギャツビー」で読める、1920年代のニューヨークやパリの華やかさ。それに当時のパリからニューヨークやロサンジェルスに広がった建築や美術の様式であるアールデコ。
機能と無関係ということで、1930年代になるとフィリップ・ジョンスンやミース・ファン・デル・ローエといった名だたる建築家に攻撃されたが、情緒も大事なクルマのデザインでは有効なアクセントだ。

コーチビルドによる唯一無二の一台
ロールス・ロイスは「世界に2台おなじクルマがない」ことをうたう。オーナーはどんなロールス・ロイス車でも、かならず自分のテイストをどこかに反映するべくオーダーを入れる。
ロールス・ロイスのカスタマイズは、さまざまなレベルが設定されている。
販売店での車体色や内装仕様のオーダーにはじまり、世界各地の「プライベートオフィス」での注文、そしてトップが「コーチビルド」。

コーチビルドは、シャシーからオーダーできるフルカスタマイズで、そのとなりに今回のコーチビルド・コレクションが新設された。
プロジェクト・ナイチンゲールは、100台の限定販売。
「数をしぼるのは重要で、需要があるからといって、いたずらに生産台数を増やしません。ただしこの先も、べつのビスポーク・コレクションを計画していくつもりです」

プロジェクト・ナイチンゲールのお披露目の場で、ロールス・ロイス・モーター・カーズのクリス・ブラウンリッジ最高経営責任者は、そう語った。
現段階では「プロジェクト」とある通り、完成形ではないとのこと。26年夏からテストをはじめ、クオリティをしっかり煮詰めたあと、28年から納車開始する予定だという。
「注文から納車までの期間はだいたい4年です。長いですか? 私たちの場合、徹底的に特別です。何度も顧客とやりとりしながら、1台ずつていねいに仕上げていきます」


















